平均値と中央値の違いと使い分けをわかりやすく解説してみた

平均値と中央値の使い分け

統計学において、データを要約し分析する際によく使用される二つの指標に、平均値と中央値があります。これらは一見似ているように思えますが、それぞれ異なる特性を持っているため、使用する状況も当然異なります。この記事では、平均値と中央値の違いと、それぞれの指標がどのような場合に適しているかを解説します。

平均値(Mean)とは

平均値とは、いくつかの数値を合わせた後、その数の総量を数値の個数で割ったものです。これは、一連の数値の「中心的な値」を見つける方法としてよく用いられます。例えば、クラスの生徒たちがテストで取った点数の平均を出すときにこの平均値が使われます。すべての点数を合計し、その合計を生徒の人数で割ることで、クラス全体のテストの成績の平均を求めることができます。

平均値のメリット

平均値の最大のメリットは、一連の数値の全体的な傾向を簡単に理解できる点にあります。平均値を使えば、個々の数値を一つ一つ見なくても、全体としての「標準的な状態」がどのようなものかを把握することができます。これにより、例えば学校の成績、職場での業務効率、ある地域の気温など、さまざまな場面での判断材料として役立てることが可能です。

以下に具体例を挙げます。

5人の生徒が数学のテストでそれぞれ70点、80点、90点、60点、100点を取ったとします。これらの点数の平均値を計算すると、全体で400点となり、5で割ると80点が平均値になります。

この80点を見るだけで、クラス全体が数学のテストで概ね良い成績を収めたことがわかります。

平均値のデメリット

しかし、平均値にはデメリットも存在します。それは、極端に高い数値や低い数値によって平均が大きく影響を受けることがある点です。つまり、数値の中に異常値がある場合、平均値だけを見て全体を判断することは適切ではありません。平均値は全体の「中央」を示しますが、個々の数値の分布状況や個別の特性を詳細に反映するものではないのです。

以下に具体例を挙げます。

ある会社の従業員10人の月給が、9人は30万円で1人が1,000万円だったとします。平均給与を計算すると、全体で1,270万円となり、10で割ると127万円が平均給与になります。

しかし、この平均給与を見ても、実際には9人の従業員が30万円しかもらっていない現状を正確に反映していません。

このように、平均値は全体の傾向を示す一つの方法ですが、個々の状況を詳細に理解するためには、他の統計的手法も併用する必要があります。

中央値(Median)とは

一方、中央値はデータセットを値の大小順に並べた時に、ちょうど中央に位置する値です。データの個数が偶数の場合は、中央に位置する二つの値の平均を取ります。中央値は、外れ値の影響を受けにくいため、データの分布が歪んでいる場合や外れ値が存在する場合に有用です。

例えば、ある地域の家の価格について考えた場合、数億円の豪邸が数件あると平均値は大きく上がりますが、中央値はそのような極端な値の影響を受けず、より「典型的な」家の価格を反映します。

そのため中央値はデータの分布における中心地点を示し、全体の傾向を掴むのに役立ちます。

中央値のメリット

中央値の最大の利点は、極端に高い値や低い値の影響を受けずに、データの中心を示せることです。これにより、データセットに異常値が含まれていても、その影響を受けることなく、一群のデータがどのような特徴を持っているかを正確に把握できます。データ分布が不均等な場合でも、中央値はより現実的な中心を提示します。

具体例としてはこのような形です。

クラスの生徒が走った100メートル走のタイムを見る場合、タイムが12秒、12.5秒、13秒、13.5秒、20秒であれば、中央値は13秒です。

20秒という極端に遅いタイムがあっても、中央値はその影響を受けずに、クラスの平均的な走力を13秒として示します。

中央値のデメリット

中央値のデメリットは、全てのデータ点の情報を完全には反映しない点にあります。これは、データセットの詳細な特性や分布の全貌を捉えるには不十分な場合があることを意味します。中央値はデータ群の中心を示しますが、データ点の変動幅や分布の偏りなど、他の重要な情報を見落とす可能性があります。

あるクラスで、生徒たちが夏休みに読んだ本の数を調べたとします。生徒が読んだ本の数が、0、1、2、2、2、3、3、3、3、50冊だった場合、中央値は3冊です。

しかし、この中央値では一人の生徒が50冊という極端に多くの本を読んだことや、本をほとんど読まなかった生徒がいる事実を完全には捉えることができません。

この例からわかるように、中央値はデータ群の特定の特性を把握するのに役立ちますが、全体の詳細な傾向や極端な値の影響を完全には表現できないことがあります。

平均値と中央値の使い分けのポイント

平均値と中央値の使い分けには、データの特性や分析の目的に基づく重要なポイントがあります。

  • 異常値の有無: データに極端に高い値や低い値(異常値)が含まれている場合、平均値はその影響を強く受けます。中央値は異常値の影響を受けにくいため、異常値が存在する場合は中央値の使用が適切です。
  • データの分布: データが正規分布している場合(データの山が一つで左右対称)、平均値が全体の傾向をよく表します。しかし、データが歪んでいる(偏りがある)場合は、中央値がデータの中心をより正確に反映します。
  • 目的の違い: 全体の傾向を把握したい場合は平均値が有用です。一方で、データの「典型的な値」を求めたい場合や、分布の中心を知りたい場合は中央値が適しています。
特性/目的平均値中央値
異常値の影響異常値の影響を受けやすい異常値の影響を受けにくい
データの分布正規分布している場合データに偏りがある場合
分析の目的全体の平均的な傾向、平均的な値「典型的」または「中心的」な値

結論

  • 異常値の影響を避けたい場合や、データの分布が偏っている場合には、中央値を使用すると、データセットの中心をより正確に反映することができます。中央値は、データ群の中央に位置する値であり、極端な値の影響を受けにくいためです。
  • データが正規分布している場合や、全体の平均的な傾向を知りたい場合には、平均値が適しています。平均値は、全てのデータポイントを考慮に入れて計算されるため、データセット全体の平均的な特性を捉えるのに役立ちます。

データの特性と分析の目的をしっかりと把握した上で、平均値と中央値のどちらを使用するかを選択することが、有意義なデータ分析への鍵となります。

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