「野生の馬って、蹄が伸びすぎたらどうしてるの?」
動物好きの方や乗馬経験者から、よく聞かれる疑問です。
実は、馬の蹄(ひづめ)は人間の爪のように常に伸び続けています。
でも野生馬たちは、自然の中で“自分で整えている”のです。
この記事では、野生馬の蹄がどう削れるのか、家畜馬との違い、そして蹄が命に関わる重要な器官である理由をわかりやすく紹介します。
野生馬はなぜ蹄を削れるのか?
蹄は馬の足の先端にある硬い構造で、衝撃を吸収し、体重を支える重要な器官です。
野生の馬たちは、毎日長距離を移動することで自然に蹄が削れ、常にちょうど良い長さを保っています。
- 蹄は月に6〜10mmほど伸びる
- 毎日20〜30km以上移動することで地面との摩擦で摩耗
- 岩場、砂地、草原など地形によって自然に整えられる
つまり、歩くこと=足のケアになっているのです。
地形ごとに違う「自動トリミング」
蹄の削れ方は地形によって異なります。
- 岩場:角張った地面が蹄の底をゴリゴリと削る
- 砂地:柔らかくも細かい粒が全体を均一に磨く
- 草原:草の根や硬い土が自然な形に蹄を整える
モンゴルの草原に生きる野生馬は、こうした地形を毎日移動しながら、無意識のうちに足を整えているのです。
家畜馬との違いは?
一方、乗馬クラブや牧場で飼育されている馬は、運動量も移動範囲も限られています。
そのため、定期的に人の手でケアをする必要があります。
- 約6〜8週間ごとに「削蹄(ていてい)」と呼ばれる処置を実施
- 蹄の保護とサポートのため「蹄鉄(ていてつ)」を装着することも
これを怠ると、蹄が伸びすぎて変形し、脚のバランスが崩れ、歩行困難や関節炎の原因になります。
蹄のケアが命を左右することもある
蹄は単なる「固い足先」ではなく、馬の命に直結する器官です。
とくに競走馬の場合、脚への負担は非常に大きく、蹄のトラブルが致命的な骨折や靭帯損傷に直結することがあります。
実際に、レース中の骨折などによって安楽死の判断がなされるケースも多く、
その背景には脚の構造や蹄の健康状態が密接に関係しています。
詳しくは、
競走馬が骨折や靭帯断裂で安楽死される理由とは?予後不良って何?自然界の馬との違いも解説
で詳しく解説しています。
野生馬にもトラブルはある?
もちろん、自然の中でも蹄のトラブルは発生します。
- 蹄葉炎(ていようえん):痛みを和らげるために水辺に立ち続ける行動が見られる
- 亀裂や乾燥:湿度を求めて水場に通うなど、本能的に対処する様子が観察されています
こうした行動は、家畜馬のケアにも応用可能です。
まとめ:蹄は「生きるための道具」であり「命の柱」
- 野生馬は毎日の移動で自然に蹄を削っている
- 地形ごとに違う摩耗の仕組みで自然な形を保つ
- 家畜馬は人の手でのケアが不可欠
- 蹄は健康だけでなく、生死を分ける要ともなる
競走馬の世界で「脚のトラブルが命を左右する」という事実を知ると、蹄の大切さがより一層実感できるはずです。
蹄はただの爪ではなく、「馬が馬であるための、命の基盤」なのです。