凧揚げは、風を利用して凧を空に舞い上がらせる、日本でもなじみ深い伝統的な遊びです。
子どもの遊びとしてだけでなく、世界中のさまざまな文化や宗教儀式、科学の分野でも長く親しまれてきました。
この記事では、凧揚げの名前の由来、日本への伝来、そして現代における凧揚げの役割と進化についてわかりやすく解説します。
凧揚げとは?
凧揚げとは、風の力と糸の操作によって凧を空高く飛ばす遊びや競技のことです。
凧は、竹や木の骨組みに紙や布を張り、糸で地上から操ります。
その起源は古く、国や時代によっては軍事目的や祈祷儀式にも使われていました。
凧の起源はどこ?
凧の発祥は古代中国とされており、最も古い記録は紀元前5世紀ごろの春秋時代にまでさかのぼります。
工匠・魯班(ろはん)が「木製の鳥」を空に飛ばしたという逸話が、世界初の凧の起源とされています。
戦国時代には凧が軍事通信や測量に活用され、唐の時代には民間にも普及し、庶民の娯楽や吉兆祈願の風習として定着していきました。
日本にはいつ伝わった?
日本に凧が伝わったのは奈良時代(710年〜784年)とされています。
仏教や漢字文化とともに中国から伝来し、当初は宗教儀礼や占いの道具として使われていました。
平安時代には貴族の遊びとして楽しまれ、江戸時代には庶民にも広がり、正月の遊びや祭礼行事として全国に定着しました。
現在のように「凧揚げ=お正月の風物詩」となったのはこの時代以降です。
👉 凧揚げが江戸時代に禁止された背景や「いかのぼり」という言葉の意味については、
いかのぼりの歴史と意味|なぜそう呼ばれるようになったのか? をご覧ください。
凧揚げの名前の由来は?
日本語で「たこ(凧)」と呼ばれる理由には、以下のような説があります。
- 形が「蛸(たこ)」に似ていた説
昔の和凧には、長く垂れるひも(尾)が複数つけられており、それがタコの足のように見えたことから名付けられたとする説。 - 「高(たか)」→「たこ」転訛説
凧が高く上がることから「高揚げ(たかあげ)」と呼ばれていたものが、言葉の変化で「たこあげ」になったという説。 - 江戸時代の風俗回避説
江戸の風紀政策により、「凧」の表記を避け、代わりに魚の「蛸」という漢字を当てたという説。風俗統制による言葉の置き換えの一例とされています。
いずれの説も明確な史料があるわけではありませんが、いずれも日本人の暮らしや言葉の感覚に根ざした興味深い仮説です。
英語ではどう表現する?
凧揚げは英語で「kite flying」と言い、凧自体は「kite」と呼ばれます。
この「kite」は、もともとタカ(鳥類)を意味する言葉から派生したもので、「空を舞う」ものの象徴として使われています。
日本の和凧は、「Japanese kite」や「Wa-dako」と紹介されることもあり、特に絵柄や形状の美しさが海外でも注目されています。
世界に広がる凧文化
凧は世界中でさまざまな意味や形で発展しています。
- 中国:春の厄払い、吉兆祈願、先祖供養などの儀式に用いられ、芸術性の高い凧も多い。
- タイ・バリ島:神事や凧揚げ祭りが盛んで、巨大で装飾的な凧が空を彩る。
- インド・パキスタン:凧合戦が国民的行事となっており、鋭い糸で相手の凧を切り落とす競技が行われる。
- 欧米諸国:18世紀には科学実験にも使用され、特にアメリカのベンジャミン・フランクリンが雷の電気を証明したエピソードが有名。
現代における凧揚げの進化
凧揚げは現代において、以下のような広がりを見せています。
- 競技としての凧揚げ:操作技術や飛行性能を競う大会が国内外で開催されている。
- 芸術作品としての凧:絵画や造形としての美しさを競うアート凧が登場。
- スポーツ分野への発展:カイトサーフィンやカイトボーディングなど、新たなアクティビティが生まれている。
- 科学教材としての活用:風の仕組みや空気力学を学ぶ教材としても使われている。
凧は遊びの枠を超え、文化・芸術・科学・スポーツを結ぶ多面的な存在となっています。
まとめ
- 凧の起源は中国の春秋時代で、日本には奈良時代に伝来したとされる
- 名前の由来には「蛸に似ている」「高く上がるから」「江戸時代の言葉の工夫」など複数の説がある
- 世界中で凧は文化や宗教、科学、競技など多様な目的で発展してきた
- 現代では遊びにとどまらず、芸術やスポーツ、教育の場でも活用されている
凧揚げはただの遊びではなく、人類が風と遊び、空に夢を託してきた歴史の結晶です。
その背景を知ることで、空に舞う凧がぐっと魅力的に感じられることでしょう。