春になると、民家の軒先や駅の高架下に見かけるツバメの巣。子どもの頃から「今年もツバメが帰ってきたね」と話していた人も多いのではないでしょうか。
でも、ふと気になりませんか?
「この巣に来たツバメ、去年と同じツバメなの?」
「それとも、まったく別のツバメが住みついてる?」
実はこれ、鳥好きの間でもたびたび話題になるテーマなんです。今回は、ツバメの“リピーター事情”を科学的な視点からわかりやすく解説していきます。
結論:どちらの可能性もあるけれど、「別のツバメ」が来ている可能性の方が高い
まず最初にお伝えしたいのは、「同じ巣に同じツバメが戻ってくることはある」ということです。ツバメは記憶力がよく、毎年同じ場所に戻る習性があります。
しかしながら、科学的に見ると、「別のツバメがやってきている可能性の方が高い」とされています。
なぜなら…
- 渡りの途中で命を落とすツバメも多く、翌年も生きて戻ってこられる確率は約50%前後といわれています。
- 人気のある場所や巣は早い者勝ちで、他のツバメに乗っ取られることもあります。
- 巣が空いていると、新たなペアが入居してしまうことも。
つまり、「去年と同じ巣=去年と同じツバメ」とは限らないんです。
ツバメは「同じ場所」に戻る習性がある
ツバメは渡り鳥で、秋に東南アジア(フィリピン、マレーシアなど)へ飛び、春に再び日本に戻ってきます。驚くことに、毎年ほぼ同じルート・同じ地域を選ぶ習性があるのです。
とくに「前年にうまく子育てができた場所」には戻りやすいと言われています。これを「繁殖成功の記憶」と呼び、鳥類学でも観察されている行動です。
巣の再利用はある?ない?
あります。状態の良い巣や安全な場所にある巣は、再利用されるケースも多いです。
- 巣が壊れていない
- 外敵が少ない
- 人間に壊されなかった
- ヒナが無事に巣立った実績がある
こうした条件がそろえば、前年と同じツバメが戻ってくる可能性はあります。ただし、巣を使うのは必ずしも“元の持ち主”とは限らないという点も覚えておきましょう。
巣の“乗っ取り”や“空き家利用”もよくあること
ツバメ社会にも“場所取り”があります。とくに条件のいい巣は他のツバメにとっても魅力的。
- 前のツバメが戻ってこなかった
- 先に他のペアが来てしまった
- 巣の一部を補修して使いまわす
こういった理由で、「別のツバメが去年の巣を使っている」ケースは少なくありません。
一般人でも見分けられる?
ツバメの個体識別は非常に難しいです。見た目も似ており、違いはわかりにくいですが、研究者は以下の方法で調査しています。
- 足にリング(足環)をつけて識別
- 尾羽の形、模様、鳴き声などで判別
私たちが見分けるのは難しいですが、同じ時期に同じ巣に来て、似た行動をしていれば「去年と同じ可能性もある」と想像するのは自然なことです。
まとめ:その巣に帰ってきたのは、去年のツバメかもしれないし、違うツバメかもしれない
科学的には、「去年と違うツバメの可能性の方が高い」とされています。けれど、同じ地域に、同じような時期に、同じような行動をするツバメが帰ってくる——それはやはり春の風物詩として心がほっこりする瞬間です。
ツバメの巣は、去年の続きの物語があるかもしれないし、新しい物語が始まっているのかもしれない。
そんな視点で巣を見守ってみると、春の楽しみがぐっと深まりますよ。