「神は死んだ」「ルサンチマン」など数々の思想を残した天才哲学者フリードリヒ・ニーチェ。
しかし彼の晩年は精神の異常に悩まされ、ついには発狂したと言われています。
いったい何が起きたのか？今回は、ニーチェの発狂の原因と最期の様子をわかりやすく解説します。
結論：発狂の原因は今もはっきりしていない
- 有力説：梅毒による脳の障害
- 他説：遺伝的要因・脳卒中説・精神疾患説など
- 真相：現在でも確定はされていない
👉 医学的にも歴史的にも完全な答えは出ていません。
有力説① 梅毒による脳障害説
ニーチェは若い頃に梅毒に感染したという説があります。
梅毒が進行すると中枢神経系にダメージを与え、幻覚・妄想・人格変化を起こすことが知られています。
- 症状が梅毒の晩期症状と似ている
- 19世紀ヨーロッパでは性病が流行していた
ただし、ニーチェの遺品から梅毒治療薬（水銀）の痕跡は見つかっておらず、異論もあります。
有力説② 遺伝・精神疾患説
- ニーチェの父親は早世し、家系的に脳疾患の可能性も指摘
- 統合失調症や双極性障害に似た症状との分析もある
👉 梅毒説を否定する研究者は、遺伝・精神疾患説を支持する傾向があります。
発狂の引き金：「トリノの馬の出来事」
1889年1月3日、イタリア・トリノでの出来事が発狂の転機となりました。
- 馬が鞭打たれている場面に遭遇
- 突然駆け寄り、馬に抱きつき号泣
- そのまま昏倒し正気に戻ることはなかった
👉 この「馬の出来事」はニーチェの発狂の象徴的エピソードとして有名です。
発狂後のニーチェの晩年
- 母エリザベートが介護を引き受ける
- 初期は興奮状態が続いたが、徐々に穏やかに
- 友人や子供たちと戯れる姿も時折あった
そして1900年8月25日、ニーチェは56歳で生涯を閉じました。
発狂は哲学に影を落としたのか？
ニーチェの発狂は、一時期「狂人の妄言」としてその思想評価に影響を与えました。
しかし現代では、発狂と哲学は切り離して論じられます。
- ニーチェ哲学は現代思想・心理学・文学に深い影響を与え続けている
- 彼の病は思想の本質的価値を損なっていない
👉 彼の代表的思想「ルサンチマン」については【小学生でもわかる！ルサンチマンってどういう意味？】でも詳しく解説しています。
現代社会にも生きるニーチェの思想
- 権力批判、道徳批判、価値観の再評価
- 「神は死んだ」「超人思想」など数多くの名言
👉 ニーチェの哲学は「クオリア（人間の主観的体験）」のような意識哲学とも重なる部分があり、【クオリアとは？意味・特徴・意識との違いをやさしく解説】も併せて参考になります。
まとめ
- ニーチェの発狂原因は梅毒説・遺伝説など複数あるが確定せず
- 「トリノの馬の出来事」が発症の決定打に
- 晩年は母の看護を受け、比較的穏やかに過ごした
- 発狂は哲学的価値を損なわず、今も思想は多方面に影響を与えている
天才と狂気は紙一重とも言われます。
ニーチェの生涯はまさにその象徴のようですが、残された思想は現代人にも深い示唆を与え続けています。
ぜひ一度、ニーチェの哲学書に触れてみるのもおすすめです。
参考資料：
The Stanford Encyclopedia of Philosophy: https://plato.stanford.edu/entries/nietzsche/
Friedrich Nietzsche (Internet Encyclopedia of Philosophy): https://iep.utm.edu/nietzsche/
