日本の伝統衣装といえば着物を思い浮かべる方が多いですが、中でも最も格式が高く華やかな装いが「十二単(じゅうにひとえ)」です。平安時代の貴族女性がまとったこの装束は、その優美さとともに「とても重い」というイメージでも知られています。
この記事では、十二単の重さや仕組み、その背景にある日本文化の奥深さまでをわかりやすく解説します。
十二単とは?そもそも何枚重ねるの?
「十二単」という名前から「12枚の衣を重ねる」と思われがちですが、実際には決まった枚数があるわけではありません。
- 平安時代の正式名称は 五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)
- 重ねる衣は儀式の内容や身分によって変化
主な構成は以下の通りです。
衣装名 | 説明 |
---|---|
単(ひとえ) | 一番下に着る下着にあたる |
五衣(いつつぎぬ) | 襲(かさね)の色目を表現する薄衣 |
打衣(うちぎぬ) | 厚みのある中着 |
表着(うわぎ) | 外から見える主衣装 |
唐衣(からぎぬ) | 背中から長く垂れる装飾的上衣 |
裳(も) | 腰に巻く長いスカート状の衣 |
すべてを重ねると通常10枚以上、多い場合は15枚前後にもなることがありました。
十二単はどれくらい重いのか?現代の感覚で例えると
十二単の重さは素材や枚数によって異なりますが、現代の再現衣装でも約10kg〜20kgほどあります。
イメージしやすく置き換えると…
- 2Lペットボトル:約5〜10本分 → 10kg〜20kg相当
- お米5kg袋:2〜4袋分 → 買い物でも重く感じる重量
- ビール瓶1ケース:約20kg → 大人が両手で持つ重さ
つまり、十二単を着たまま自由に動くのは非常に大変で、立ち居振る舞いにも体力と優雅さが求められました。
なぜ十二単はそんなに重いのか?
十二単が重くなる主な理由は以下の2つに集約されます。
① 天然素材(絹)の重量感
- 平安時代の十二単は高級絹をふんだんに使用
- 現代の合成繊維と異なり、絹は厚みも重さもある
- 刺繍や織り文様が施され、さらに重量が増す
② 色合わせ(襲の色目)を美しく表現するため
- 平安貴族の衣装美学「襲(かさね)の色目」で季節感や身分を表現
- 春は桜、秋は紅葉など自然の移ろいを色で重ねる
- 美しさを極めるために重ねる枚数が自然と増えた
平安時代の色彩美学は食文化や行事にも反映され、例えば
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でも似たような色の象徴表現が見られます。
十二単はなぜそこまで重くても着用されたのか?
十二単は単なる服飾ではなく、当時の価値観や精神文化を象徴する存在でした。
- 格式と身分の象徴
→ 重ねの美しさが高貴さを表現 - 自然と季節の美意識
→ 草花・紅葉・雪など自然界の美を色で表現 - 慎ましさ・優美さの演出
→ 動きを抑え、静かで優雅な所作が重視された
重くても身にまとうのは、日本的美意識の極致ともいえます。
現代でも十二単を着ることはできる?
現代でも以下の場面で十二単は使用されています。
- 皇室行事:新嘗祭・即位礼などの公式儀式
- 結婚式:本格和婚スタイルでの着用例
- 観光体験:京都などの観光地や写真スタジオで体験版を用意
※現代の体験用は約5kg前後と軽量化されている場合も多く、平安装束の雰囲気を気軽に楽しめます。
さらに、初心者向けのコスプレ版なども登場しています。
まとめ
- 十二単は平安時代の貴族女性が着用した最上級の正装
- 素材の絹と色合わせ文化により約10〜20kgもの重さに
- 襲の色目で自然の美を表現する日本独自の美意識が反映
- 現代でも皇室儀式・和婚・体験イベントで触れる機会がある
十二単の重みの中には、平安文化の美意識・季節感・精神性が凝縮されています。現代ではなかなか日常で着る機会はありませんが、その奥深い世界観に思いを馳せてみると、日本文化への理解がより深まります。