なぜ天秤は裁判や法律のシンボルなの?意味と歴史をわかりやすく解説

てんびんの象徴性

裁判所の建物や法廷のマーク、法律事務所のロゴなどでよく見かける「天秤を持った女性」。なんとなく「正義の象徴」とは知っていても、なぜ天秤が選ばれたのかは意外と知られていません。

実はこの天秤のシンボルには、古代から現代に続く深い歴史と意味が込められています。この記事では、天秤が法律や裁判の象徴となった理由を、わかりやすく解説します。

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結論:天秤は「公平・バランス・正確さ」の象徴だから法律の世界で使われている

天秤が裁判や法律のシンボルになったのは、重さを正確に量り、左右が釣り合った状態=「公平・公正」を表す道具だからです。さらに、古代からの神話や宗教儀式にも結びつき、今日の法の象徴として定着しています。

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天秤の起源は古代エジプトの死後の裁きにさかのぼる

天秤と正義の結びつきは、実は古代エジプト文明にまで遡ります。

エジプト神話の「心臓の重さを量る儀式」

古代エジプトでは、人は死後「冥界の裁き」を受けると信じられていました。冥界では死者の心臓が天秤に乗せられ、片方には「マアトの羽根(真実・正義の象徴)」が置かれます。

  • 心が軽ければ:真実を重んじた清らかな生涯 → 楽園へ
  • 心が重ければ:罪深い生涯 → 罰を受ける

この天秤の儀式が「正義=天秤」のイメージの原点になったと考えられています。

古代ギリシャ・ローマで法の女神が天秤を持つようになる

このエジプト神話は後のギリシャ・ローマ世界にも影響を与えました。

  • ギリシャ神話のテミス(Themis)
    正義・秩序の女神で、目隠しをせず天秤と剣を持つ姿で描かれることが多い。
  • ローマ神話のユースティティア(Justitia)
    ギリシャのテミスがモデルとされ、正義の象徴として現代の「法の女神像」に最も近い姿を持つ。

このように、古代から「正義を量る道具」として天秤が用いられ、法律文化に定着していきました。

天秤が象徴する「裁判の理想的な姿」

なぜ天秤が現代まで法律や裁判の象徴となり続けているのか――そこには以下の理由があります。

① 公平性

  • 天秤は左右が釣り合った状態を保つ道具
  • 裁判では、被告人・原告・証拠・証言すべてを平等に扱い、偏りなく判断するべきという考えを表現

② 精密さ・正確さ

  • わずかな違いも敏感に量れる天秤は、証拠の重みや事実認定の重要さを象徴
  • 裁判では細かな事実の積み重ねが判決を左右する

③ 客観性

  • 重さそのものに主観は介在せず、誰が量っても結果は同じ
  • 裁判も本来「誰が判断しても結論は同じ」であるべきという理念を反映

目隠しの意味:裁判における「無偏見の理想」

現代の法の女神像では、天秤とあわせて目隠し(ブラインドフォールド)をしている姿もよく見かけます。

  • 目隠しの意味
    個人の地位・身分・権力・感情などに左右されず、証拠と法律だけを基に公平に判断するべき、という理想を表現しています。

つまり「天秤」と「目隠し」を組み合わせた像は、法の世界で最も大切とされる「中立性・公平性・客観性」を象徴しているのです。

現代でも天秤が使われる理由

現在も多くの裁判所、弁護士会、法律関係機関のロゴやマークに天秤が採用されています。それはまさに、法の根本理念が今も変わっていないことを示しています。

  • 法の下の平等
  • 公正な裁判
  • 中立的な判断

こうした理想を象徴する普遍的なアイコンとして、天秤は今後も使われ続けるでしょう。

まとめ

天秤が裁判や法律のシンボルとなったのは、古代エジプトの宗教観に始まり、ギリシャ・ローマの法思想を経て現代に至るまで続く、長い歴史と深い意味があるからです。

左右が釣り合う天秤は、裁判に必要な「公平さ」と「正確さ」をわかりやすく表現しており、法律の世界で今も大切にされ続けています。ニュースや法廷ドラマで天秤のマークを見かけたら、ぜひこの背景を思い出してみてください。

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