「卜」というたった一画のシンプルな漢字。しかし、この字が「うら」と読まれる理由に疑問を持ったことはありませんか?
漢字の奥深い成り立ちや日本語への影響を知ると、たった一文字の背景にも驚くほどの歴史が隠されているのです。
今回は、「卜(うら)」の意味・由来・読み方の歴史を丁寧に解説します。
結論:「卜(うら)」は占いの象徴から日本語に適応して定着
「卜」は古代中国の占い文化から生まれた象形文字です。
日本に漢字が伝来した後、「占う(うらなう)」という日本語と結びつき、短縮されて「うら」と読む訓読みが定着しました。
漢字「卜」の起源:占いを象徴する象形文字
「卜」は、もともと古代中国の殷(いん)王朝(紀元前16〜11世紀)で行われていた占いを表す文字として生まれました。
- 亀甲獣骨占い(けっこうじゅうこつうらない)
- 牛の肩甲骨や亀の甲羅に穴を開け、火を当ててひび割れを作り、その形から吉凶を占った。
- ひび割れ(亀裂)の形状を象形化したのが「卜」。
このため、「卜」は「割れ目」「ひび割れ」=「占いの結果」を表す象形文字となりました。
「卜」が日本で「うら」と読まれる理由
古代中国から漢字が伝わると、日本語の中でその意味に合う言葉が当てられました。
「卜」の意味する「占い」に対応する日本語が「うらなう」。ここから以下のような流れで訓読みが生まれました。
- 漢字の意味に合う日本語を当てる
- 「卜」=「うらなう」
- 略式・慣用の短縮形が生まれる
- 「うらなう」→「うら」
この短縮形「うら」は、占いそのものや未来を予知する行為全般を表す言葉として使われるようになります。
日本における「卜」の使用例
「卜」は普段の日本語の中ではあまり単独で見かけませんが、以下のような場面で今も使われます。
- 姓・氏族名
- 例:「卜部(うらべ)」
- 古代には占いを司る職能集団「卜部氏」が存在し、朝廷で重要な役割を担っていた。
- 地名・地籍
- 一部地域で地名に使用されている例もある。
- 占い関連の古典語
- 古文書などで「卜する(うらなう)」と使われる。
実は日本独自の読み方だった
「卜」を「うら」と読むのは完全に日本独自の訓読みです。
中国語では「卜」は「ブー(bǔ)」と発音され、現代中国語でも「占い」を意味するまま使われています。
日本語では、意味を受け取り、自国の言葉に適応させる形で読みが定着していきました。
占い文化と「卜」の深い関係
日本における占い文化でも「卜占(ぼくせん)」という言葉があります。
- 卜占(ぼくせん)
- 占星術や易占と並ぶ古代の占い方法の一つ。
- 亀甲・獣骨占いの名残を持つ言葉。
このように「卜」は、漢字としての読み以外にも、日本の占い文化全体に痕跡を残しているのです。
まとめ
「卜(うら)」という読みには、古代中国の占い文化と日本語の柔軟な適応力が重なり合っています。
たった一画の漢字に秘められた深い歴史を知ることで、普段目にしない文字もぐっと身近に感じられるはずです。