華やかな競馬の世界の裏側で、レース中に骨折や靭帯断裂などの重傷を負った競走馬が安楽死されるというニュースを目にしたことはありませんか？
「なぜ治療できないの？」「自然界ではどうなるの？」という疑問を抱いた方も多いはず。
この記事では、医学的な観点と動物福祉の視点から、競走馬に安楽死が選ばれる理由と、自然界との違いについてわかりやすく解説します。
なぜ競走馬は骨折で安楽死されるのか？
競走馬の脚は非常に繊細で、500kgを超える体重を細く長い脚で支えています。
そのため、足をケガすると命に関わる深刻な状況に陥ることがあります。
1. 馬の脚は「命を支える柱」
- 1本の脚に故障が出ると、他の3本に過剰な負担がかかる
- 長期間バランスを崩すことで「蹄葉炎（ていようえん）」など命に関わる病気を併発しやすい
- 馬は基本的に寝たままでは生きられず、立ち続けることが前提の生き物
2. 治療の困難さとストレスの大きさ
- ギプスや手術による固定が難しい（ずれたり重さに耐えられない）
- 治療期間中のストレスが非常に強く、立てないことでパニックになることも
- 高額な費用に対して回復の見込みが不透明
そのため、長期的な苦痛やストレスを回避するという観点から、安楽死という選択がなされる場合があります。
「予後不良」とは？
競馬のレース後やニュースでよく見かける「予後不良」という言葉は、回復の見込みが極めて低く、治療によって馬の苦しみを長引かせてしまうと判断された状態を指します。
【予後不良と判断される例】
- 骨折が複数に及ぶ
- 関節が破壊されている
- 靭帯・腱が大きく断裂している
- 蹄葉炎が進行している
「予後不良」という言葉には、単なる医療的な回復不能だけでなく、“馬の尊厳を守るための最終判断”という重みが含まれています。
競走馬以外でも安楽死されることはある？
はい。競走馬に限らず、乗馬クラブの馬や観光施設の馬でも、以下のような理由で安楽死が検討されることがあります。
- 深刻な骨折や腱断裂で歩行不能
- 慢性的な蹄葉炎で苦痛が強い
- 高齢による衰弱と二次的疾患
ただし、競走馬はスピードを求められる競技の中で特に脚への負担が大きく、重傷になりやすいため、安楽死に至る割合が相対的に高くなっています。
自然界の馬や動物はどうしているのか？
野生の馬や動物たちには、当然ながら治療やリハビリという選択肢は存在しません。
- 足をケガすると捕食者から逃げられず命を落とす
- 群れから取り残され孤立してしまう
- 傷が悪化し、栄養不足や感染で死亡する
こうした「治療されない」自然界の現実については、
野生馬の蹄（ひづめ）は伸びたらどうなる？自分で削れる？仕組みをわかりやすく解説！
の記事でも、自然の中で生きる馬の生態と身体の仕組みを紹介しています。
また、ナキウサギってどんな動物？ のように、環境の変化や怪我が命取りになる動物は他にも多く、自然界では「生き延びる＝健康でいること」が絶対条件となります。
治療は本当にできないのか？
近年では、技術の進歩により一部の症例で治療が試みられることもあります。
- 特殊な手術で骨を固定
- 再生医療的なアプローチ
- 施設内でのリハビリ管理
しかし、数ヶ月〜1年以上にわたる治療と再発リスク、馬自身のQOL（生活の質）を考慮すると、「安らかに旅立たせる」方が苦痛を減らす判断とされることも多いのです。
まとめ：安楽死は命を尊重する苦渋の判断
競走馬が安楽死される理由は、「治療ができないから」ではなく、馬にこれ以上苦しみを与えないための人道的な判断です。
- 馬の脚は命を支える要であり、重傷は致命的
- 予後不良とは、「治療によっても回復が見込めない」状態
- 自然界では、治療の選択肢すらなく、即死に直結する場合も
- 現代の医療が進んでも、すべての症例を救えるわけではない
この現実を知ることで、競馬や馬との向き合い方に新たな理解が生まれるはずです。
