とろけるような脂と濃厚な旨みで、今や「寿司の王様」とも称されるトロ。
大トロ、中トロといった言葉に、思わず特別感を抱く人も多いのではないでしょうか。
しかしこのトロ、実はかつて捨てられていた部位だったという驚きの歴史があるのをご存知ですか?
この記事では、トロがどんな部位なのか、なぜ昔は捨てられていたのか、どのように高級ネタへと進化したのかを、わかりやすく解説します。
結論:トロは「くどい・腐りやすい」と敬遠され、捨てられていた
現代では高級ネタとして人気のトロですが、昭和初期ごろまでは「脂っこくて傷みやすい部位=売れない・不要」という扱いを受けていました。
当時の日本人の味覚や保存技術の限界により、トロは寿司ネタどころか市場で廃棄されることもあったのです。
トロってどこの部位?どんな味?
トロとは、マグロの腹部にある脂の多い部位を指します。
- 中トロ:赤身と脂身の中間、バランスの良い旨み
- 大トロ:脂が最も多く、とろけるような口当たり
この部分はマグロ全体の数%しか取れないため、希少性が非常に高い部位でもあります。
トロが「捨てられていた」理由とは?
1. 昔の日本人は「赤身こそ上等」と思っていた
昭和初期までの日本では、
- 「脂=くどい・体に悪い」
- 「魚はさっぱりしているのが美徳」
という考え方が一般的でした。赤身こそが“本物”の寿司ネタとされ、脂の多いトロは敬遠されたのです。
2. 冷蔵・冷凍技術が未発達だった
脂の多い部位は酸化しやすく、変色・腐敗しやすいという欠点があります。
冷蔵庫が普及する以前は、こうしたトロのような部位は保存・流通が難しく、扱いにくい「厄介もの」でした。
トロが再評価された3つのきっかけ
1. 冷凍技術の進歩
昭和30年代以降、冷蔵・冷凍保存の技術が急速に進化。
トロのような脂の多い部位でも、鮮度を保ったまま寿司屋に届けることが可能になりました。
2. 高度経済成長と食の欧米化
1960年代以降、日本人の食生活にも大きな変化が。
- 「脂ののった肉・魚=ごちそう」
- 「濃厚な味=贅沢」という価値観が一般化
これにより、脂の旨味を評価する食文化が広まり、トロが“美味しい”とされるようになったのです。
3. 寿司職人の工夫と提案
江戸前寿司の職人たちが「赤身ばかりでは飽きる」として、あえてトロをすすめる工夫を凝らしました。
ここから「トロって美味しいかも?」と気づいた食通が徐々に増え、寿司ネタとしての評価が一変していきます。
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トロは“寿司の華”へと進化した
1980年代には、寿司が国内外で「日本料理の象徴」としての地位を確立。
その中で、トロは贅沢で特別感のあるネタ=寿司の象徴的存在となっていきました。
- 希少価値:大トロは一匹のマグロからごくわずか
- 価格高騰:天然本マグロの大トロは超高級品
- 海外人気:英語では「Fatty Tuna」と呼ばれ、海外高級寿司店でも人気
トロの変遷は「味覚と価値観の進化」の象徴
昔は捨てられていたトロが、今では“別格扱い”のネタとなった背景には、日本人の味覚・価値観・技術の進歩が密接に関わっています。
- 食の価値観の柔軟性
- 技術進化への適応力
- 職人の提案力
これらが融合したことで、トロは「食べ物」から「文化の象徴」へと昇華しました。
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まとめ:トロは“味の常識”が変化した証
- 昔は脂っこくて敬遠され、保存も難しく“捨てられていた”
- 冷凍技術・嗜好の変化・職人の工夫で寿司の花形ネタに
- トロの復権は、日本の食文化の進化と柔軟性を象徴する
今や「あこがれのネタ」として輝くトロですが、そこには日本人の感性の変化と寿司文化の奥深さが詰まっているのです。
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