寿司好きなら誰もが憧れる「大トロ」「中トロ」。
とろける脂と濃厚な旨みで、高級寿司の代名詞ともいえるネタですよね。
でも実は、この“トロ”という部位、かつては捨てられていた存在だったことをご存知ですか?
今回は、トロが「廃棄物」から「最高級ネタ」へと生まれ変わった驚きの歴史を、わかりやすく解説します。
そもそも「トロ」とは?寿司ネタ界の主役の正体
トロとは、マグロの腹部にある脂の多い部位のこと。
その中でも、脂の割合が少なめで赤身の名残がある部分を「中トロ」、脂がしっかり乗った最上級部位を「大トロ」と呼びます。
現在では「とろける旨さ」として絶大な人気を誇っていますが、驚くことにこの部位、昔はまったく人気がなかったどころか、廃棄されていたのです。
トロはなぜ捨てられていたのか?
20世紀半ばまで、日本では「脂=くどい・不健康」というイメージが強く、赤身こそが“本物の魚”として好まれていました。
また、当時は冷蔵・冷凍技術が未発達だったため、脂の多いトロはすぐに傷みやすく、流通に不向きな部位とされていたのです。
- 脂が酸化しやすく変色・腐敗しやすい
- 保存も輸送も困難で、使い道がなかった
- 結果、多くの市場で捨てられていた
今では考えられませんが、トロは「腐りやすくて売れない部位」だったというわけです。
トロが再評価されたきっかけは?
トロが寿司ネタとして注目され始めたのは、昭和中期以降の冷蔵・冷凍技術の進歩が大きな要因です。
- 冷凍技術の普及
トロの鮮度を保つことができるようになり、流通と保存が安定しました。 - 高度経済成長と食の欧米化
日本人の嗜好が変化し、「脂の旨さ」=ごちそうという価値観が広まりました。 - 寿司屋の工夫と提案
江戸前寿司の職人たちが「赤身だけでは飽きる」として、あえてトロをすすめたことも。
こうした複数の要素が重なり、“捨てられていたトロ”は一気に脚光を浴びるようになったのです。
トロ=寿司の高級ネタへと進化した道のり
1980年代以降、寿司は国内外で「日本料理の象徴」としての地位を確立。
その中で、「とろけるトロ」は寿司の華として大人気となります。
- 希少部位であるため価格が上昇
- 大トロは一匹のマグロからわずか数%しか取れない
- 海外では「Fatty Tuna」として高級料理の代名詞に
特に天然の本マグロのトロは、寿司屋でも“別格”扱いされ、入荷すら難しいことも珍しくありません。
トロの歴史は、日本人の味覚の変化を映す鏡
トロが「廃棄物」から「最高級」へと昇格した背景には、日本人の味覚や価値観の変化、そして冷凍技術や物流の発展が深く関わっています。
昔は赤身が正義だった寿司の世界に、脂の旨味という新たな価値が加わったことで、食文化そのものが広がっていったのです。
トロの復権は、ただのネタの変化ではなく、日本の食の進化を象徴するエピソードとも言えるでしょう。
トロの物語をもっと楽しみたい方におすすめの本
寿司をもっと深く楽しみたいなら、以下の2冊がおすすめです。
寿司ネタひとつひとつにまつわる豆知識や裏話を、面白く読める一冊です。
トロをはじめ、サーモンや貝類など、寿司好き必読のネタが満載!
視覚的に寿司を楽しみたい人にぴったり。
図鑑形式で、ネタの部位や特徴がひと目で分かるので、お子様にもおすすめです。
まとめ:トロの価値は、時代と共に変わる「味の常識」
- トロは昔、脂っこさと扱いづらさから廃棄されていた
- 冷凍技術と嗜好の変化で、寿司の高級ネタへと進化
- その歴史は、日本の食文化の柔軟性と革新力を象徴している
今では“あこがれのネタ”として扱われるトロですが、
その価値は「変化を受け入れた」日本人の感性によって育てられたものだと言えます。
寿司を味わうとき、その一貫の中にある物語も、じっくり味わってみてはいかがでしょうか。