多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)は、血液中の免疫細胞(形質細胞)ががん化して増殖する血液のがんです。骨や腎臓など、さまざまな部位に影響を及ぼしやすく、初期症状が分かりにくいため、発見が遅れることもあります。
この記事では、多発性骨髄腫の症状・原因・治療法・生存率までをやさしく解説し、他の血液がん(白血病・悪性リンパ腫)との違いにも触れます。
結論:多発性骨髄腫は早期発見が難しいが、治療の選択肢は増えており、長期生存も可能
多発性骨髄腫は進行性のがんですが、現在では治療法が進化しており、長期にわたる寛解(症状のない安定状態)を目指すことができます。
多発性骨髄腫とは?
多発性骨髄腫は、骨髄に存在する形質細胞ががん化し、
異常な免疫グロブリン(Mタンパク)を過剰に産生することで、骨や腎臓に障害を与える疾患です。
通常、形質細胞は感染防御に関わる抗体を作る役割を担っていますが、
骨髄腫細胞になると正常な血液細胞の産生を妨げ、全身にさまざまな症状を引き起こします。
主な症状
- 骨の痛み(特に背中・腰・肋骨)
- 貧血による倦怠感・疲労感
- 感染症にかかりやすくなる
- 高カルシウム血症による意識障害・便秘など
- 腎機能の低下(Mタンパクによる腎障害)
骨折や腎障害を契機に発見されることも多く、症状が風邪や腰痛と誤認されやすいのが特徴です。
発症リスクと原因
- 発症年齢の中央値:70歳前後
- 性別:男性にやや多い
- 人種:アフリカ系に多く、日本人にも増加傾向
- 環境要因:化学物質、放射線への曝露など
明確な原因は不明ですが、加齢と免疫異常の関与が指摘されています。
生存率と予後
米国SEERデータによると、多発性骨髄腫の5年相対生存率は約57〜75%と報告されています。
ただし、
- 初期発見かどうか
- 合併症の有無
- 遺伝子異常のタイプ
- 治療への反応性
によって大きく異なります。
「治癒」よりも「寛解」を目指す治療が基本です。
主な治療法
- 化学療法:抗がん剤による治療。多剤併用が基本。
- 自家造血幹細胞移植:65〜70歳以下の体力がある患者が対象
- 分子標的薬(プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬など)
- 免疫療法(抗体医薬・CAR-T療法など)
- 支持療法(骨折予防、痛み・感染症対策)
治療は外来で行えるものも多くなっており、生活の質を保ちながら長期管理するスタイルが増えています。
再発と長期フォロー
多発性骨髄腫は再発を繰り返す傾向があるがんですが、
そのたびに新たな薬や治療戦略を組み合わせて、長く病気と付き合うことが可能です。
定期的な血液・尿検査や画像検査を続けながら、症状の出現や進行を防ぐ「慢性疾患としての管理」が求められます。
関連疾患もチェック(血液がんの種類)
3つの血液がんの違いや特徴をまとめた記事もご覧ください。
→ 血液のがんとは?白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫の違いと種類をわかりやすく解説
まとめ
- 多発性骨髄腫は形質細胞ががん化する血液がん
- 骨痛や貧血、腎機能低下など多彩な症状が出る
- 高齢者に多く、再発を繰り返しやすいが、治療法は進歩している
- 完治よりも寛解を目指し、長期的なフォローと生活支援が重要
体の異変を感じたら早めの受診を。適切な治療と希望をもって向き合えば、
多発性骨髄腫とも前向きに共存する道が開けます。