太陽光発電といえば屋根の上のパネルを思い浮かべますが、近年注目を集めているのがペロブスカイト太陽電池です。
軽くて薄く、曲げられるという特性を持ち、窓や衣服、車体に貼り付けられるなど応用範囲の広い次世代型の太陽電池。未来のエネルギーシステムを大きく変える可能性を秘めています。
太陽電池の基本
太陽電池は、太陽光を電気に変換する装置です。光を受けると内部の材料から電子が移動し、電流が流れます。
現在主流のシリコン系太陽電池は20%前後の変換効率を持ち、安定性と量産性に優れていますが、硬くて重いという課題がありました。
ペロブスカイト太陽電池の特徴と効率比較
ペロブスカイト太陽電池は、特殊な結晶構造(ペロブスカイト構造)を持つ材料を用いた新世代の太陽電池で、以下の特徴があります。
- 軽量で曲げられる
シートのように薄く加工でき、曲面にも設置可能です。 - 透明化が可能
窓ガラスに貼るだけで発電でき、景観を損ないません。 - 製造が容易でコスト低減
従来のシリコンパネルより低温で製造でき、量産に向いています。 - 急速に効率が向上
研究開始からわずか10年ほどで変換効率は26%超(単接合セル)に到達。さらに、シリコンと組み合わせたタンデム型では30%超の効率が報告されています。
(参考:シリコン単独は20%前後が主流)
ペロブスカイトという名前の由来
この太陽電池の材料がペロブスカイト構造(A-B-X3型の結晶構造)を持つことから命名されました。
構造の柔軟性によりさまざまな材料の組み合わせが可能で、性能を自由に最適化できることが特徴です。
実用化が期待される分野
- 窓ガラス:透明な発電窓として利用
- 衣服・バッグ:移動中のスマホ充電
- 車両・ドローン:軽量で走行しながら発電
- 宇宙用途:軽さが求められる人工衛星や宇宙船に最適
課題と研究動向
- 水や湿気に弱く、長期耐久性に課題
- 高温で性能低下
- 一部材料の環境負荷(鉛を含む場合あり)
現在、耐久性向上と鉛を使わない環境対応型材料の開発が進んでいます。
市場予測:2040年には4兆円市場へ
調査会社富士経済の予測によると、ペロブスカイト太陽電池の世界市場は2040年度に約4兆円規模に達すると見込まれています(2025年度比で約67倍)。
国内市場も2025年度の8000万円から2040年度には342億円規模まで成長する見通しです。
企業動向:
- 積水化学工業・積水ソーラーフィルム:2025年度から商用化
- 東芝なども2027年度頃に参入予定
- パナソニックHDはガラス型の開発を進め、リコーもフィルム型で開発競争に参戦
特に注目されているのが「タンデム型」。
ペロブスカイトとシリコンを組み合わせ、発電効率をさらに高める方式で、2030年ごろから普及が加速すると予測されています。
(参考:日経新聞)
まとめ
- ペロブスカイト太陽電池は軽く・曲がる・透明化できるという従来にない特徴を持つ
- 効率は研究段階で26%超、タンデム型では30%超とシリコン系(約20%)を上回る可能性
- 2040年度には世界市場4兆円規模が見込まれており、未来のエネルギーを変える技術として期待されている