2023年から2024年にかけて話題になったアニメ『葬送のフリーレン』。静かで美しく、登場人物の心の動きを丁寧に描いたこの作品は、多くのファンを魅了しました。
ところが、SNSでは「倍速で観たらよくわからなかった」という投稿が波紋を呼び、倍速視聴という視聴習慣に疑問を投げかけるきっかけとなりました。
今回はこの騒動を通じて、「作品を味わうとはどういうことか」について、改めて考えてみたいと思います。
「フリーレン」騒動とは何だったのか?
発端はX(旧Twitter)に投稿されたある感想。
「倍速で『葬送のフリーレン』を観たけど、なんか退屈だったしよくわからなかった」
それに対して、「この作品を倍速で観るなんてもったいない」「間や空気感を味わう作品なのに」という反論が続出。タイパ(タイムパフォーマンス)重視の視聴スタイルと、“じっくり味わう作品体験”の価値がぶつかった瞬間でした。
フリーレンが伝えようとしていたもの
『葬送のフリーレン』は、戦いの後に訪れる“静かな日常”を描いた物語です。
一見淡々と進む物語の中に、小さな心の揺れや、過去との対話が丁寧に織り込まれています。
例えば、フリーレンの表情の変化はごくわずかですが、それが彼女の心の成長を物語っています。
また、背景に描かれる草花や風景、小道具の配置には、物語や人物の内面を暗示する情報が詰まっており、そうしたディテールは“等速”でじっくり見なければ気づくことができません。
倍速視聴は悪なのか?
もちろん、情報の整理や学習において、倍速視聴が有効な場面もあります。
ニュースや講義動画などは内容が中心であり、「間」や「空気」を味わう必要はそれほどありません。
ですが、感情を伝えることが主目的であるアニメや映画などにおいては、制作者が“1秒のために何十時間も費やして作り上げた演出”を飛ばしてしまうことにもなりかねません。
つまり、作品には“倍速に向いているもの”と“等速でこそ味わえるもの”があるということです。
フリーレン騒動が教えてくれた視聴の本質
『葬送のフリーレン』は、現代の「効率重視」「時短至上主義」に、さりげなく一石を投じた作品とも言えるかもしれません。
「時間をかけて何かを味わう」
「無駄のように見える“間”にこそ感動がある」
そうした価値観を思い出させてくれるこの作品だからこそ、倍速視聴という行為が話題になったのではないでしょうか。
大切なのは“視聴の選び方”
筆者自身は普段から倍速視聴はしませんが、今回の騒動を通じて、あらためて「どんな作品も等しく流し見してしまっていないか?」と自問するようになりました。
作品の性質に合わせて、丁寧に向き合うものと、気軽に楽しむものとを自然に選び分ける——
それが今後のデジタル時代において、より豊かな視聴体験を得る鍵になるような気がしています。
もっと“本質”を大切にするために
タイパを求めつつも、本質を見失わない。
そんなバランス感覚を養うのにぴったりな一冊がこちらです:
効率よく生きるための考え方だけでなく、「大切なものを見極める力」についても学べる一冊です。倍速視聴を否定するのではなく、使いどころを見極めたい人におすすめです。
まとめ
- 倍速視聴が注目された背景には、現代の「効率重視」の価値観がある
- 『葬送のフリーレン』は、等速視聴だからこそ感じられる“静かな感動”がある作品
- コンテンツの性質に合わせた“視聴の選び方”が、体験の質を高める
- タイパと本質のバランスを考えるきっかけとして、この騒動は今でも示唆に富んでいる