【解説】韓国・尹(ユン)前大統領に死刑求刑。なぜ「内乱罪」?歴代大統領が訴追される構造的理由

判決

「一国の元トップに死刑求刑?」
「ニュースでよく見るけど、本当に執行されるの?」

2026年1月、韓国の特別検察が尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領に対し、内乱首謀などの罪で死刑を求刑しました。
衝撃的なニュースですが、感情的な見出しに流されず、背景にある「法と政治の仕組み」を知ることが大切です。

この記事では、今回問われている「内乱罪」の中身と、なぜ韓国の大統領は退任後にこれほど厳しい捜査を受けるのか、その構造的な原因を分かりやすく整理します。

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30秒でわかる記事の要点

  • 求刑=判決ではない:あくまで検察側の主張であり、裁判所の決定ではありません。
  • 執行の壁:韓国は法律上に死刑がありますが、1997年以来執行がない「事実上の廃止国」です。
  • 罪の核心:2024年12月の「非常戒厳」で、軍を使って国会を封鎖した行為が「内乱」と問われています。
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結論:死刑「求刑」と「執行」の間には高い壁がある

まず、ニュースを見て動揺しないための結論からお伝えします。

1. 「求刑」は検察の意見

今回は特別検察側が「死刑に処すべきだ」と主張した段階です。過去の例(全斗煥元大統領など)を見ても、裁判所がそのまま死刑判決を出すとは限りませんし、上級審で減刑されることもあります。

2. 韓国は「事実上の死刑廃止国」

ここが重要なポイントです。韓国には刑法上に「死刑」が存在しますが、1997年以来、約30年間にわたり一度も執行が行われていません(アムネスティなどが「事実上の廃止国」と分類)。
仮に判決で死刑が確定したとしても、現在の国際関係や人権意識の観点から、実際に執行されるハードルは極めて高いのが現実です。

尹前大統領は具体的に何をした?(罪状の核心)

今回、最大級の刑が求められた理由は、汚職ではなく「国家のシステムを武力で壊そうとした」とされる点にあります。
※本稿では便宜上、当該行為を法的名称である「内乱」と表記します。

罪名:「内乱首謀」など

2024年12月3日、ユン大統領(当時)は突如として「非常戒厳」を宣布しました。
検察側は、これを「憲法の要件を満たさない違法な軍事力行使」と認定。特に武装した戒厳軍を国会議事堂に突入させて議場を封鎖し、議員の投票権を物理的に奪おうとした行為を問題視しました。これが「国権を排除し、権力を不当に維持しようとした内乱」にあたると判断されたのです。

なぜ韓国の大統領は「捜査・訴追」が繰り返されるのか?

「韓国の大統領は退任後に不幸になる」というイメージがありますが、これは「呪い」ではなく、政治システムが生む構造的な要因が大きく影響しています。

1. 権力が集中しすぎる「帝王的大統領制」

韓国の大統領は、人事・予算・監査・捜査指揮などにおいて絶大な権限を持ちます。そのため、在任中は権力に近づこうとする人々による腐敗のリスクが高く、逆に退任後はその強大な権力の行使が「適正だったか」を厳しく問われる立場に反転します。

2. 「5年1期」で再選なし

任期が5年限りで、再選がありません。

  • 前半: 強い権力で前政権の不正を徹底的に暴き、支持を集める傾向があります(積弊清算)。
  • 後半: 自身の求心力が落ち(レームダック)、次期政権への交代とともに「捜査される側」になるリスクが高まります。

3. 政治対立と「徹底追及」の文化

世論の注目が集まる事件では、過去の政権への追及が政治的な争点になりやすい側面があります。
「不正は徹底的に正すべき」という国民の強い正義感が、時として退任した最高権力者への厳しい断罪(逮捕や重刑)を求める世論につながることがあります。

【修正版】歴代大統領の退任後の状況リスト

過去の事例を整理すると、必ずしも全員が極刑になっているわけではありませんが、多くが在任中の行為について厳しい法的責任を問われています。

大統領退任後の状況原因・経緯
李承晩亡命不正選挙デモによりハワイへ亡命
朴正煕暗殺在任中に側近により射殺される
全斗煥無期懲役(恩赦)一審で死刑判決→二審で無期懲役へ減刑→その後特赦
盧泰愚懲役刑(恩赦)内乱罪や収賄で懲役17年→特赦
盧武鉉自殺不正資金疑惑の捜査中に投身
李明博懲役刑(恩赦)収賄などで懲役17年→特赦
朴槿恵懲役刑(恩赦)弾劾罷免後、職権乱用などで懲役20年超→特赦
文在寅起訴元娘婿の特恵採用疑惑などに絡む収賄容疑で起訴(2025年報道)
尹錫悦死刑求刑(公判中)非常戒厳による内乱首謀罪など

よくある疑問(FAQ)

Q. 「内乱罪」ってそんなに重いの?

A. 国家に対する最悪の犯罪とされ、最高刑は死刑です。
刑法上の「内乱の首謀」は、死刑または無期懲役と定められています。国家の存立そのものを脅かす行為であるため、殺人などと並んで最も重い罪の一つです。

Q. なぜ死刑判決が出ても執行されないの?

A. 国際関係と人権外交の影響が大きいです。
韓国はEU(欧州連合)などとの外交・通商関係を重視しており、死刑を執行すれば「人権後進国」として国際的な批判や経済的デメリットを受ける可能性があります。そのため、法制度上は残しつつも、実質的には執行を停止する「モラトリアム」を続けています。

まとめ

尹前大統領への死刑求刑は、法的な手続きであると同時に、韓国社会が「民主主義のルール(議会制)」を軍事力で壊そうとした行為に対して示した、強い拒絶反応の表れとも言えます。

  • 現状: 特別検察による「死刑求刑」。判決はこれから。
  • 背景: 「非常戒厳」という憲法秩序への挑戦が問われている。
  • 今後: 司法判断と、その後の政治判断(恩赦など)が焦点。

「隣国の騒動」として片付けず、「権力者が法を超えようとした時、司法はどう機能するか」という民主主義の重い実例として注目する必要があります。

参考情報

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