「関東は台風の進行方向右側に入るため、暴風に警戒が必要です」
――天気予報でよく耳にするこんな言葉。
でも、ちょっと不思議に思いませんか?
「え、台風の右と左って、そんなに違うの?」
「中心からの距離が同じなら、被害も同じじゃないの?」
実はこれ、知っているだけで避難判断が変わるほど大事な知識なんです。
私自身、2022年の台風14号(関東接近時)で右側に位置するエリアに住んでいた際、突風で自転車ごと吹き飛ばされ、ビニールハウスの骨組みが近所を飛び交うのを目の当たりにしました。
「右側は危ない」と言われる理由を、身をもって体験した瞬間でした。
この記事では、そんな「台風の右側がなぜ危険なのか?」という疑問に、最新情報と信頼できる公的機関の情報をもとに、やさしく丁寧に解説します。
結論:右側は“風+進行速度”が合わさって威力が倍増するから
台風は「反時計回り」の渦を巻く巨大な低気圧です。
そのため、進行方向に向かって右側では台風の風と進行速度が合わさり、左側では相殺されるという特徴があります。
つまり、右側の方が風が強く、被害も大きくなりやすいのです。
この右側を「危険半円」、左側を「可航半円」と呼ぶこともあります。
台風の風は反時計回り。進行方向との“合成”で危険倍増
たとえば、台風の風速が30m/sで、北へ時速30km(=約8.3m/s)で進んでいるとしましょう。
- 右側(東側)では、30 + 8.3 = 38.3m/s
- 左側(西側)では、30 − 8.3 = 21.7m/s
このように、右側の方が実質的な風速が約1.7倍近くになることもあります(てるるん日記など民間気象解説によると、右側が約10m/s強くなるケースがあるとされています)。
しかも、風だけではありません。右側は「進行方向」でもあるため、雨・雷・突風・高潮などの危険が最初にやってくるエリアでもあります。
「危険半円」と「可航半円」ってどういう意味?
元々は船乗りの用語で、
- 危険半円(右側): 船が進むのに向かい風&波。避けるのが困難
- 可航半円(左側): 風に乗って動けるため、避難しやすい
という性質があります。
ただし、「可航半円=安全」ではありません。
気象庁やtenki.jpによれば、左側でも暴風・大雨が発生することは珍しくなく、台風の強さや進行方向によっては、左側でも深刻な被害が出る可能性があります。
台風の右側が引き起こしやすい被害とは?
右側では、以下のような複数のリスクが重なりやすくなります:
- 暴風による飛来物・ガラス破損・倒木
- 猛烈な雨による河川氾濫・土砂災害
- 台風本体の進行による“押し寄せる風雨”の集中
- 高潮と重なると、海岸沿いで浸水の危険性が倍増
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台風の進路予報と「どちら側に入るか」を意識しよう
気象庁が発表する「台風予報円」は、台風の中心が将来どこにある可能性があるかを示すものであり、危険半円や可航半円の違いまでは表示されていません(※参考:気象庁公式資料)。
そのため、ニュースや解説では「進行方向の右側に当たる地域では、特に警戒が必要です」といった補足がされます。
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まとめ:右側はただの「方角」ではない、“危険ゾーン”である
台風の「右側が危険」と言われる理由は、風の向きと進行速度が合わさることで、暴風の威力が増す構造的な性質によるものです。
しかも、風だけでなく雨や高潮の影響も重なり、被害がより深刻になりやすいのです。
「右側に入るかどうか」を知っておくだけで、台風への備え方は大きく変わります。
「うちは右側だから早めに片づけよう」「今回は左側だから風は弱めかな」――そんな判断の材料になる知識として、ぜひ覚えておいてください。また、台風時には停電することが多いため、モバイルバッテリーはしっかり準備しておきましょう。