こんにちは、学校での思い出といえば、年に一度の身体測定を思い出す方も多いのではないでしょうか。今日は、かつて当たり前だった「座高測定」について、その歴史と意外な真実をお話しします。実は私自身、教員時代にこの座高測定の意味について疑問を持っていたんです。一緒に座高測定の謎を解き明かしていきましょう。
1. 座高測定の始まり:意外な目的とは?
皆さんは座高測定がいつから始まったか知っていますか?実は、その起源は明治時代にまで遡ります。
明治時代の「活力検査」から始まった座高測定
座高測定は、明治11年(1878年)に始まった「活力検査」の一環として導入されました。当時の目的は、なんと徴兵検査のためだったのです。
「え?徴兵検査?」と驚かれた方も多いでしょう。実は、当時は「足が短いほど重心が低くなり、下半身が安定する」という考えがあり、これが「良い兵士の条件」とされていたのです。つまり、座高が高い=胴長短足の人が「良い兵士」として評価されていたわけです。
私が教員だった頃、この事実を知って驚いたことを覚えています。平和な現代では想像もつかない理由ですよね。
2. 戦後の座高測定:健康管理の指標に
「胴長は健康」という考え方
戦後、座高測定の目的は「健康管理」へと変わりました。昭和12年(1937年)に全国で統一された学校身体検査規定では、次のような考え方が示されています。
「人間の重要臓器は下肢を除く体幹に集中しているため、この部分の発育状態の良しあしは人間の生活機能に極めて重要な関係を持つ。座高が身長よりも重要であるという学問的結論に至った」
つまり、「胴長=健康」という考え方が主流だったのです。しかし、この考え方には科学的根拠が乏しく、私を含む多くの教育者が疑問を感じていました。
3. 座高測定の意義:本当に必要だったのか?
座高測定の3つの目的
文部科学省によると、座高測定には以下の3つの目的があったとされています。
- 個人および集団の発育や体型の変化を知る
- 重要な部分(脳や各種臓器)の発育を評価する
- 統計処理によって集団の発育の様子が分かる
しかし、これらの目的は本当に座高測定でしか達成できないものだったのでしょうか?
疑問の声が上がる
実際、多くの学校現場から「座高と健康状態の関係を示す明確な指標がない」「測定結果をどう活用すればよいかわからない」という声が上がっていました。
私自身、養護教諭や先輩教師に座高測定の意義を尋ねたことがありますが、明確な答えを得られなかったことを覚えています。
4. 座高測定の廃止:時代の変化と共に
2014年、ついに廃止へ
長年続いてきた座高測定ですが、2014年に文部科学省が学校保健安全法施行規則を改正し、2016年度から座高測定が必須項目から除外されることになりました。
この背景には、以下のような理由がありました:
- 測定の必要性を感じない
- 検査結果を活用できない
- 身長と体重の成長曲線で十分に発育評価ができる
教育現場の反応
興味深いことに、文部科学省の調査では、座高測定を「省略してもよい」と答えた教師の割合は、小学校で28.3%、中学校で32.6%、高等学校で36.6%にとどまりました。
つまり、半数以上の教師が座高測定の継続を支持していたのです。これは、長年続いてきた慣習の影響力の大きさを示しているのかもしれません。
まとめ
座高測定の歴史を振り返ると、時代とともに変化する教育のあり方が見えてきます。かつては徴兵のため、そして健康管理のために重要視されてきた座高測定。しかし、科学的根拠の不足や実用性の低さから、ついに廃止されることとなりました。
この変化は、私たち教育者に何を教えてくれているのでしょうか。それは、常に「なぜ」を問い続けることの大切さではないでしょうか。慣習や伝統に縛られすぎず、子どもたちにとって本当に必要なものは何かを考え続けることが、教育の質を高めていくのだと思います。
皆さんも、自分の学生時代を思い出しながら、教育の在り方について考えてみてはいかがでしょうか。