電子タバコの煙は水蒸気?他人への害はある?成分と仕組みを整理

電子タバコ
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「水蒸気だから大丈夫」は本当か

電子タバコから出る白い煙。匂いが少ないから「これって水蒸気でしょ?」「紙巻タバコよりマシだよね」と思っている人は多いはずです。

ただ、吸っている本人も周りにいる人も、実ははっきりした根拠を持っていない。だから「本当に大丈夫なのか」と、なんとなくモヤモヤしたまま過ごしています。

この記事では、電子タバコから出ているものの正体と、他人への影響について科学的な根拠をもとに整理します。

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結論:水蒸気ではなく「エアロゾル」

先に答えを言うと、電子タバコの白い煙は水蒸気ではありません。

正しくはエアロゾルと呼ばれるもので、液体が熱で霧状になり、細かい粒子として空気中に漂っている状態です。何が含まれているかは製品によって異なりますが、ニコチンや化学物質が周りの人にも届く可能性があります。

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、ニコチンの有無に関係なく健康への懸念があると明記されています。つまり「無害」とは言い切れないということです。

水蒸気とエアロゾルの違い

多くの人が混同している「水蒸気」と「エアロゾル」。この違いを理解することが第一歩です。

水蒸気
水が気体になったもので、透明で目に見えません。お風呂で鏡が曇るのは、水蒸気が冷えて水滴になったときに見えているだけです。

エアロゾル
液体や固体の微粒子が空気中に浮遊している状態で、目に見えます。電子タバコの白い煙はこちらです。

米国CDCも、電子タバコから出るものは無害な水蒸気ではなくエアロゾルだとはっきり述べています。

粒子が存在するということは、吸った人の肺に入るだけでなく、吐き出されたものが周りの空気に混ざるということです。

電子タバコの仕組み

電子タバコがどうやって煙を出しているのか、基本構造を見てみましょう。

主な部品

  • バッテリー(電源)
  • 加熱コイル(金属製)
  • リキッドを吸い上げる芯
  • リキッド(液体)が入ったタンク

動作の流れ
ボタンを押す→電気でコイルが加熱される→リキッドが気化する→冷えて微粒子になる→白い煙(エアロゾル)として見える

タバコの葉を燃やしているわけではないので、燃焼で発生する有害物質は減少します。ただし「何も出ていない」わけではありません。

電子タバコに含まれる成分

リキッドに含まれる成分は製品によって異なりますが、基本的な構成は共通しています。

ベース成分

プロピレングリコール(PG)植物性グリセリン(VG)

どちらも食品添加物や医薬品に使われる成分です。ただし、食べたり肌に塗ったりするのと、加熱して吸い込むのとでは話が別です。長期的に吸入した場合の影響は、まだ完全には解明されていません。

香料

フルーツやお菓子系など、様々なフレーバーがあります。吸いやすくするためのものですが、香料の種類は非常に多く、すべての安全性が確認されているわけではありません。

ニコチン

日本国内
ニコチン入りリキッドは、薬機法の規制により一般の店舗では販売されていません。

海外
ニコチン入りが主流です。WHOは、電子タバコのエアロゾルにはニコチンをはじめとする有害物質が含まれており、周囲の人にも影響を及ぼす可能性があると警告しています。

注意点
WHOによると、「ニコチンフリー」と表示された製品からニコチンが検出された事例があります。表示を100%信頼できるとは限りません。

加熱による化学変化

リキッドを加熱すると、元の成分が化学変化を起こすことがあります。特にアルデヒド類などの物質が生成される可能性が指摘されています。発生量は使用温度や頻度によって変わります。

金属成分

加熱コイルから微量の金属が検出されることもあります。こうした報告は「ただの水蒸気」では説明できません。

他人への害はあるのか

結論から言うと「ゼロではない」です。

紙巻タバコの副流煙ほど危険なのか、それとも気にするほどではないのか。どちらかに断定するのは難しいですが、「気にしなくていい」とも言えないのが現状です。

受動ばく露は実際に起きている

電子タバコを使用した後の室内で、周りの人がニコチンにさらされることが研究で確認されています。

複数の論文をまとめたレビューでも、「電子タバコの受動ばく露は紙巻タバコより有害物質が少ない傾向はあるが、無害ではない」という結論が出ています。

WHOの警告

WHOは「電子タバコのエアロゾルには有害物質が含まれており、周囲の人にも害を及ぼしうる」と明確に述べています。

この見解からも、「完全に無害」という主張は成り立ちません。

部屋に残る問題

吐き出されたエアロゾルが壁や家具に付着して残る可能性も指摘されています。まだ研究途上の分野ですが、ニコチンの有無にかかわらず残留物の影響を調べた論文も発表されています。

「換気すれば問題ない」と簡単には言えないということです。

どんな場面で吸わないほうがいいか

「安全か危険か」で悩むより、「トラブルにならない基準」を決めたほうが現実的です。

避けるべき場所

  • 子どもがいる室内
  • 妊婦がいる空間
  • 喘息や呼吸器系に問題がある人がいる場所
  • 車内
  • 換気が悪い狭い室内

吸うなら守りたい最低限のルール

  • 屋外で人から離れた場所で吸う
  • 風下に人がいないか確認する
  • 近くに人がいる場合は一声かける
  • 基本的に室内では吸わない

これは単なる「マナー」の話ではなく、エアロゾルが周囲に広がるという仕組みに基づいた判断です。

よくある誤解

「匂いが少ないから害も少ない」

匂いの強さと健康への影響は別物です。むしろ匂いが少ないと、周りの人が気づきにくく避けられないため、トラブルになりやすいという面もあります。

「ニコチンなしなら安全」

ニコチンがなければリスクもゼロになるわけではありません。エアロゾル自体が発生していますし、含まれる成分は多様です。さらに、ニコチンなしと表示されていても実際には含まれていた例もあります。

「換気扇の下なら大丈夫」

拡散はしますが完全に消えるわけではありません。同じ空間にいる時点で、受動ばく露の可能性は残ります。

禁煙目的で使う場合

ここは意見が分かれる部分です。

  • そもそも吸っていない人が始める理由はありません
  • 紙巻タバコを吸っている人が完全に切り替えた場合、有害物質へのばく露が減る可能性はあります
  • ただし長期的な影響は不明な部分も多く、国や機関によって見解が異なります

イギリスの公的機関は、成人喫煙者の害を減らす手段としての可能性を示すレポートを出しています。一方でWHOはリスクと規制の必要性を強調しています。

もし禁煙したいなら、電子タバコで妥協するより、禁煙外来や禁煙補助薬を使って完全にやめることを目指したほうが、長期的には良い選択になるでしょう。

よくある質問

加熱式タバコも同じ?

基本的には同じです。加熱式タバコも燃やさずにエアロゾルを発生させるタイプなので、見た目より軽いわけではなく、周囲への配慮が必要です。国立がん研究センターも、加熱式はエアロゾルを吸うものだと説明しています。

水蒸気とエアロゾルの違いを簡単に言うと?

水蒸気は気体の水で目に見えません。エアロゾルは液体や固体の細かい粒が空気中に浮いている状態で目に見えます。電子タバコの白い煙は後者です。

近くで吸われたとき、どう断ればいい?

「電子タバコの煙は水蒸気ではなく、周りの人にも影響する成分が含まれていると公的機関が発表しています」と伝えれば十分です。CDCやWHOの説明を根拠にできます。

まとめ

電子タバコから出ているのは水蒸気ではなくエアロゾルです。

成分は製品や使い方によって変わり、ニコチンの有無だけで安全とは判断できません。周りの人への受動ばく露は実際に確認されているため、室内や車内では吸わない、子どもや妊婦や呼吸器に問題がある人がいる場面では避ける——この基準が最もトラブルが少ないです。

体調に不安がある人や症状が出ている人は、自己判断せず医師に相談してください。


参考情報

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「電子たばこ」
  • WHO「Tobacco: E-cigarettes Q&A」
  • CDC「About E-cigarettes」
  • CDC「Preventing Chronic Disease: Secondhand Aerosol Review」
  • Czogala et al. 2013「Secondhand Exposure to Nicotine Study」
  • Stracci et al. 2025「Thirdhand Vape Residue Systematic Review」
  • 英国政府「Nicotine Vaping in England 2022 Evidence Update Summary」
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