海辺を歩いていて、ふと「この雨で海水が薄まるんじゃないか?」と思ったことはありませんか?子どもの頃、大雨の後に海水を舐めて「ちょっと薄くなったかも!」なんて盛り上がった記憶がある方も多いのではないでしょうか。でも実際のところ、雨で海の塩分濃度は変わるのでしょうか?
今回は、そんな素朴な疑問に科学的な視点からお答えします。
結論:海全体はほぼ変わらないが、局所的には薄まる
まず結論から言うと、雨が降っても海全体の塩分濃度が薄まることはほぼありません。ただし、表層や湾内、河口付近など局所的には一時的に薄まることがあります。
ではなぜそうなるのか、順を追って見ていきましょう。
海の塩分濃度が変わらない理由
1. 海の水は圧倒的に多い
地球の水の約97%は海水で、その量は約13億立方キロメートルといわれています。対して、降る雨の量は微々たるもので、仮に1日中大雨が降っても、海全体に対する影響は無視できるレベルです。
2. 海は常にかき混ざっている
海には潮流や海流があり、表面の水も深層の水も絶えず循環しています。雨が降っても、その影響はすぐに他の水と混ざり、広く拡散されてしまいます。
3. 蒸発と降水のバランス
海水は常に蒸発して空にのぼり、やがて雨として戻ってきます。この蒸発と降水は地球全体で見るとバランスしているため、長期的な塩分濃度の変化は起きにくいのです。
局所的に塩分濃度が下がる場所と理由
海面付近
雨が大量に降ると、海面付近には一時的に真水の層ができます。これは風や波が強くなるとすぐに混ざりますが、風が弱い穏やかな状況では、ほんの数センチの表面だけが薄まることがあります。
河口付近
川の水が流れ込む場所では、もともと塩分濃度が低くなっています。雨によって川の水量が増すと、さらに薄まることがあります。
閉鎖的な湾や入り江
外海との水の交換が少ない場所では、雨の影響が比較的長く残る場合があります。
こうした局所的な塩分低下は、一時的には魚の行動や水温分布にも影響を与えることがあります。
雨以外で塩分濃度が変化する要因
- 川の流入:特に雪解けや台風後は淡水が大量に入り込みます
- 氷の融解:極地では氷が溶けることで表層の塩分が低くなる
- 人間活動:淡水放流や埋め立てなどによる影響
まとめ
雨が降っても、海全体の塩分濃度は変わりません。しかし、海面近くや河口・湾内などの限定された場所では、一時的に薄くなることがあります。
海は地球規模で見ると驚くほど安定した環境を保っており、そのバランスの絶妙さには感心させられます。今度、海に出かけたときは、そんな自然の仕組みにも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
もし、他の地域の海水温と比較してみたい、全国的な傾向を知りたいという方は、ぜひこちらの記事もチェックしてみてください。
また、関連知識としてこちらもおすすめです: