「多肉植物は葉っぱ一枚から増えるから、無限にお金が稼げるらしい」
「副業で月10万円稼いでいる主婦がいるらしい」
SNSやネットでこんな噂を聞いて、心が動いたことはありませんか?
確かに、多肉植物は他の植物に比べて「増やしやすい」「送りやすい」という特性があり、副業としてのポテンシャルは高いジャンルです。
しかし、結論から言うと「お金目的だけで参入すると、思わぬ落とし穴にはまります」。
なぜなら、生き物を扱うリスクと、絶対に知っておかなければならない「法律の壁」があるからです。
この記事では、多肉植物販売の実態、儲かると言われる理由の裏側、そして多くの初心者が知らずに踏んでしまう法的なリスクについて、包み隠さず解説します。
結論:月数千円〜3万円は目指せるが「ビジネス」への道は険しい
まず現実的な数字をお伝えします。
趣味で楽しみながら、余剰株(増えすぎた分)を販売して「月数千円〜3万円程度」のお小遣いを目指すことは、初心者でも不可能ではありません。
しかし、これを「ビジネス」として月10万、20万と安定して稼ごうとすると、途端にハードルが上がります。
広大な保管場所、徹底した温度管理、梱包の手間、そして流行(トレンド)を追うリサーチ力が必要になるからです。
- 趣味の延長(お小遣い稼ぎ): ◎ おすすめ。楽しいし、次の苗代になる。
- ガチの副業(生活費の足し): △ かなり覚悟が必要。
- 完全なビジネス: × 初心者がいきなりやるのは危険。
「植物が好きで、毎日世話をするのが苦じゃない」人だけが、結果として利益を出せる世界だと覚えておいてください。
なぜ「多肉は儲かる」と言われるのか?3つの理由
それでもなお、多肉植物が副業として人気なのは、他の商材にはないメリットがあるからです。
1. 原価を限りなく0円に近づけられる
これが最大の理由です。多肉植物の多くは、「葉挿し(葉っぱ一枚から芽が出る)」や「株分け」で増やすことができます。
一度親株を買えば、時間はかかりますが、そこから理論上は商品を生産し続けられます。仕入れコストがかかり続ける「転売」とはここが違います。
2. 配送しやすい(ただしリスクあり)
切り花や普通の観葉植物は、水がないとすぐ枯れてしまいます。しかし、多肉植物は体内に水分を溜め込んでいるため、「抜き苗(土を落とした状態)」で数日間箱に入っていても比較的元気です。
※ただし、真夏の蒸れや真冬の凍結には弱いため、季節に応じた梱包の工夫は必須です。
3. コレクション性が高く、リピーターがつく
多肉植物には数千以上の品種があり、それぞれに熱狂的なファンがいます。
「この出品者の苗は状態が良い」と信頼されれば、新作を出すたびに即完売するようなファンビジネスが成立します。
【最重要】知らないと危ない「4つの法律の壁」
ここがこの記事で一番伝えたいことです。
「増やすのが簡単なら、ホームセンターで買った苗を増やして売ればいいじゃん」
そう思った方、ちょっと待ってください。それは法律違反になる可能性があります。
1. 種苗法(しゅびょうほう)の罠
2021年の法改正でも話題になりましたが、「登録品種(PVP)」として登録されている植物を、開発者の許可なく増やして販売(譲渡含む)することは、育成者権の侵害となります。
違反すると、損害賠償請求や刑事罰の対象になる可能性があります。
- 対策: タグに「PVP」「登録品種」とあるものは避けるのはもちろん、念のため農林水産省の「品種登録データ検索」で品種名を照合する癖をつけましょう。
2. 輸入販売と植物防疫法
「海外から珍しい苗を安く輸入して売ろう」と考える人もいますが、これには高いハードルがあります。
植物を輸入するには、輸出国政府機関が発行した「植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)」が必要です。これがないと税関で廃棄処分になりますし、輸入後の国内検査も必須です。土がついたままの輸入も原則禁止されています。
3. 肥料の小分け販売(肥料法)
「よく効く肥料を小分けにしてオマケでつけよう」
これもNGです。肥料を小分けして販売(無償譲渡含むケースもあり)するには、「肥料の品質の確保等に関する法律」に基づき、届出や成分表示などの義務が発生します。初心者は手を出さないのが無難です。
4. 確定申告(所得税法)
会社員などの給与所得者の場合、副業の所得(売上から経費を引いた額)が年間20万円を超えると、原則として確定申告が必要になります。
条件は人によって異なるので、売上が増えてきたら国税庁の案内を確認しましょう。
現実を見よう:利益のシミュレーション
「1個500円で売れたら、500円儲かる」わけではありません。メルカリなどのフリマアプリを使った場合の、リアルな利益計算を見てみましょう。
【例:500円の苗を1つ売った場合】
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 販売価格 | 500円 | |
| 販売手数料(10%) | -50円 | メルカリの場合 |
| 送料(第4種郵便) | -170円〜 | 重量による。梱包材含む |
| 梱包資材費 | -30円 | フードパック、ティッシュ等 |
| 手元に残る利益 | 約250円 | ここから土代・苗代を回収 |
ここからさらに、撮影・出品・梱包・発送にかかる「時間(人件費)」を考えると、単品販売では時給換算で数十円になってしまうことも珍しくありません。
勝ち筋は「セット販売」です。
「初心者向け5種セット 1,500円」のようにまとめ売りすることで、送料や手間の比率を下げ、利益率を高めるのが賢いやり方です。
メルカリで選ばれるための「差別化」戦略
ライバルが多い中で選ばれるには、安心感とわかりやすさが鍵です。
1. 出品文で「安心」を伝えるテンプレート
転売品ではなく、大事に育てた苗であることをアピールしましょう。
【出品文例】
自宅の庭で1年以上育てた、根の張った元気な苗です。
雨ざらしでスパルタ管理していたので、環境の変化にも比較的強いと思います。
増えすぎてしまったので、可愛がってくれる方にお譲りします。
※虫食いや葉焼けがある場合がありますが、成長には問題ありません。
2. 梱包への気遣い
「届いたら葉がバラバラだった」が一番のクレーム原因です。
- 土は完全に乾かしてから発送する
- ティッシュなどの柔らかい紙で優しく包む
- 箱の中で動かないように固定する
これらを徹底し、「梱包が丁寧でした!」という評価を積み重ねることが、最強の集客になります。
よくある質問 FAQ
Q. どの品種から始めたらいいですか?
A. 最初は「普及種(ふきゅうしゅ)」と呼ばれる、ホームセンターでも売っている丈夫な品種(ブロンズ姫、秋麗、白牡丹など)がおすすめです。育てやすく増やしやすいので、練習に最適です。
Q. 第4種郵便って何ですか?
A. 植物の種子や苗を送るために認められた郵便サービスです。通常の定形外郵便より安く送れますが、「中身が植物だとわかるようにする(一部見えるように梱包する)」などのルールがあります。また、追跡や補償がないため、高額な苗にはメルカリ便などを使いましょう。
Q. 登録品種かどうか調べる方法は?
A. 農林水産省の「品種登録データ検索」サイトを使います。「品種名称」の欄に名前(例:桃太郎)を入力して検索し、登録されていなければOK、登録されていれば育成者権が消滅しているかなどを確認します。
まとめ:愛があれば「副業」はもっと楽しくなる
多肉植物の副業は、決して「楽して稼げる打ち出の小槌」ではありません。
しかし、植物への愛があれば、これほど楽しい副業もありません。
「早く大きくなれ」と急かすのではなく、「綺麗に育ってくれたね」と愛でていたら、いつの間にか増えていて、それをお裾分けしたらお小遣いになった。
これくらいのスタンスでいられる人が、結果として長く続き、ファンもつき、収益も上がっていきます。
もしあなたが「毎日土に触れるのが幸せ」と感じるなら、まずは自宅の「増えすぎた一株」から出品してみませんか?
