「期待されるとやる気が出る」「信じてもらえると頑張れる」
そんな経験、誰しもあるのではないでしょうか?それを心理学で説明するのが「ピグマリオン効果」です。
この記事では、ピグマリオン効果の意味・使い方・由来・歴史・実例・ゴーレム効果との違いまでを科学的な視点も交えてわかりやすく解説します。
ピグマリオン効果とは?
ピグマリオン効果とは、他人から期待されることで、その期待に応えようとする気持ちが働き、実際に成果や能力が向上する心理的現象のことです。
例:
- 「君ならできるよ」と言われて励まされた結果、努力し成果が出た
- 先生や上司から信頼されていると感じたことで、自信が湧き、実力を発揮できた
つまり、周囲の“まなざし”が本人の行動や結果に影響を与えるという点がポイントです。
どんな場面で使われるの?
教育現場
- 教師が生徒を「伸びる子」として接すると、学力が実際に上がるケースがある
- 逆に、期待されない子どもは成績が伸びにくくなることも(=ゴーレム効果)
※期待が低いことで成果が落ちてしまう現象についてはこちら

職場・マネジメント
- 上司が部下にポジティブな期待をかけることで、本人の能力が引き出される
- 「任せてみよう」「期待しているよ」の言葉が行動の原動力になる
子育て・家庭
- 「あなたはちゃんとできる子」と信じて声をかけることで、子どもの自己肯定感が育つ
- 自信やチャレンジ意欲にも良い影響を与えるとされています
人間関係全般
- 恋愛や友人関係でも、「あなたって気が利くね」と言われ続けると、実際にそのように振る舞うようになることがあります
誰が提唱したの?実験と歴史
ピグマリオン効果は、アメリカの心理学者ロバート・ローゼンタールと教育者レノア・ジェイコブソンの研究により、1968年に広く知られるようになりました。
有名な「オーク・スクール実験」
- 小学校の教師に、無作為に選んだ生徒を「将来伸びる可能性が高い」と伝える
- 実際には、選ばれた生徒はランダムで、学力とは無関係
- 結果:その生徒たちは本当に成績が向上した
この研究により、「教師の期待が生徒のパフォーマンスを高める」ことが示されました。
ただし再現性には議論も
この実験は画期的とされましたが、その後の追試研究では明確な効果が再現されないケースも報告されています。また、統計的な分析や実験の方法論に対する批判もあり、現在では「期待の効果はあるが、状況により異なる」「単純な因果関係ではない」と考えられています。
名前の由来はギリシャ神話
この効果の名前は、ギリシャ神話に登場する彫刻家「ピグマリオン」に由来しています。
ピグマリオンは、自分が彫った女性像に恋をし、「本物の女性になってほしい」と願い続けた結果、神の力でその像に命が宿り、実際に女性となったという伝説があります。
この神話になぞらえ、「強い願いや期待が現実をつくる」心理的な現象をピグマリオン効果と名付けたのです。
ゴーレム効果との違い
ピグマリオン効果と対をなすのが「ゴーレム効果」。
こちらは「期待されないことで本当に成果が下がってしまう」という逆の現象です。
比較項目 | ピグマリオン効果 | ゴーレム効果 |
---|---|---|
期待の方向 | 高い期待 | 低い期待 |
結果 | 成果・能力が向上する | 成果・能力が低下する |
原因 | 信頼・前向きなまなざし | 無関心・レッテル貼り |
応用シーン | モチベーション・育成 | 萎縮・機会損失 |
活用と注意点:期待の「質」が鍵
ピグマリオン効果を活かすには、「期待のかけ方」が重要です。
活用のヒント
- 小さな成功を見つけて、具体的に褒める
- 「できる」と伝えるのではなく、「これからできるようになる」と未来を信じる
- チャンスを与え続ける(任せてみる・意見を聞く)
注意点
- 過度な期待はプレッシャーになることもある
- 相手の個性や状況を見極めずに「期待する」だけでは逆効果になる場合も
研究者の間では、期待されることそのものよりも、期待に基づいた行動(関心、励まし、支援)が鍵だという見解もあります。
まとめ
- ピグマリオン効果は、期待されることで成果が上がる心理現象
- 提唱者はローゼンタールとジェイコブソン。1968年の実験で広まった
- 名前はギリシャ神話の「ピグマリオン」から
- ゴーレム効果はその逆で、「期待されないと成果が下がる」現象
- 効果には再現性の議論や限界もあり、“期待のかけ方”が重要なカギ
人は、「信じてもらえている」という感覚が、自信や行動のエネルギーになります。
小さなひと言やまなざしが、誰かの成長を引き出すかもしれません。