ご飯にのせる「おかか」、料理に欠かせない「だし」。
日本の食卓でおなじみのかつお節は、実は縄文時代から食べられていたという歴史を持つ、奥深い伝統食材です。
さらに、カツオだけでなく、様々な魚からも「節(ぶし)」が作られていることをご存知ですか?
この記事では、かつお節の起源・製法・種類・栄養・使い方まで、3分で理解できるようわかりやすく解説します。
縄文時代からあった?かつお節の起源
青森県八戸市の一王寺貝塚からは、縄文時代前期(約7000年前)にカツオを食べていた痕跡が発見されています。
5世紀頃には、干したカツオ=堅魚(かたうお)が登場。これは、現在のかつお節の原型と考えられています。
そして大宝律令(701年)では、
- 堅魚
- 煮堅魚(にかたうお)
- 堅魚煎汁(せんじる)
の3種が朝廷への献納品(税として納める品)に指定され、
伊豆・土佐・駿河などの沿岸地域が主要産地として記録に残されています。
江戸時代に確立された“今のかつお節”
現在のかつお節に近い製法が整ったのは、江戸時代中期です。
- 和歌山県・印南浦(いなみうら)で燻乾法(くんかんほう)が開発
- 1674年頃、土佐(高知県)の宇佐浦に伝わり、全国に普及
この製法は、カツオをゆでてから焙乾(燻製乾燥)し、表面を削って整形し、
必要に応じてカビ付けを行うという、今の“本枯節”の原型です。
🔍 焙乾とは?
薪などでじっくりと煙を当てて乾燥させる工程。10数回繰り返し、約1ヶ月以上かけて水分を抜くことで保存性と旨味を引き出します。
かつお節にカビ!?「本枯節」とは?
高級なかつお節には、白いカビを何度も付ける「カビ付け」という工程があります。
このカビ(Aspergillus glaucus=アスペルギルス・グラウクス)は、次のような働きをします。
- 水分と脂肪の分解 → より長持ち&香り高く
- だしが濁らない透明感ある仕上がり
- 雑菌・悪いカビの繁殖を抑制
- 熟成された旨味と芳醇な香りを生み出す
この工程を3〜4回以上繰り返したものが「本枯節(ほんがれぶし)」と呼ばれ、
削ると木のように硬く、「世界一硬い食品」とも言われます。
日本各地に伝わった節文化と地域ごとの特色
かつお節は全国で作られていますが、以下のような代表的傾向があります:
地域 | 名称 | 傾向(※一部例外あり) |
---|---|---|
高知県 | 土佐節 | 本枯節が中心。カビ付け4回以上の最高級品も多く、深い旨味。 |
鹿児島県 | 薩摩節 | 荒節(カビ付けしない)中心で香りが強く、すっきりした出汁向き。 |
静岡県 | 伊豆節 | 生利節〜本枯節まで幅広く製造。バランスの取れた味が特徴。 |
※各地域内でも様々な製法・品質の節が存在します。
カツオだけじゃない!「節」は他にもある
「節」はカツオ以外の魚でも作られ、料理によって使い分けられます。
- 宗田節(そうだぶし): カツオより濃厚。ラーメンや濃い出汁に最適。
- 鯖節(さばぶし): 関東の蕎麦つゆや煮物に。クセが少なく使いやすい。
- 鮪節(まぐろぶし): 上品な香りで、料亭や精進料理でも用いられる。
- 鯵節(あじぶし): 甘みとコクがあり、汁物や味噌汁にも◎。
- 鰯節(いわしぶし): 風味が強く、みそ汁や野菜の煮物に相性抜群。
これらを単品またはブレンドして使うことで、より複雑で奥深い“和の味”が生まれます。
栄養価もすごい!かつお節の成分
かつお節は、驚くほど栄養が凝縮された食品です。
- たんぱく質:約75g/100gあたり(高タンパク低脂質)
- 必須アミノ酸(イノシン酸・ヒスチジン)
- ビタミンB群(特にB1・B2・ナイアシン)
- カルシウム・鉄分・亜鉛などのミネラル
健康志向の高まりから、動物性たんぱく源かつ低糖質な調味食材として再注目されています。
用途別:節の選び方と使い分け
出汁を取るなら?
- 本枯節(カビ付けあり): 雑味が少なく、澄んだ上品な出汁に。
- 荒節(カビ付けなし): コクと香りが強く、こってり系や煮物に。
トッピングに使うなら?
- 薄削り: 冷奴・おひたし・お好み焼きなど、ふわっと香らせたい時に。
- 厚削り: おにぎり・炊き込みご飯・混ぜご飯など、食感も楽しみたい料理に。
保存方法のコツ
- 未開封なら常温可。ただし高温多湿はNG
- 開封後は密閉容器へ → 冷蔵庫または冷暗所で保管
- 削り節は風味が飛びやすいため、早めの使用がおすすめ
まとめ:かつお節は日本の「味の源流」
かつお節は、ただの乾物ではなく、日本の味の基盤を支えてきた発酵と技術の結晶です。
- 縄文時代から食べられていた干しカツオ
- 江戸時代に確立された焙乾・カビ付け技術
- 地域と素材によって進化する多様な“節”
- 高栄養・高保存性・高い旨味
これらすべてが組み合わさって、「出汁文化」=日本の味を形作ってきました。
今日も誰かの食卓で、静かに美味しさを支えている――
それが、かつお節という存在です。