「おかか」でおなじみのカツオ節。実はその歴史は縄文時代まで遡り、白いカビを使うという意外な製法があることをご存知でしょうか?しかも、カツオ以外の魚でも作られているんです。今回は、日本の伝統食材研究家の山田が、カツオ節の秘密に迫ります。
縄文時代から食べていた?カツオ節の歴史
カツオ自体は縄文時代前期から日本人の食用となっていました。青森県八戸市の一王寺(いちおうじ)貝塚からその痕跡が見つかっています。5世紀頃には干しカツオが作られていたとみられますが、これは現在のカツオ節とはかなり異なる、干物に近いものだったようです。
律令国家も認めた重要食材
大宝(たいほう)律令では、「堅魚(かたうお)」「煮堅魚(にかたうお)」「堅魚煎汁(かたうおせんじる)」という3種類の加工品が献納品として指定されました。伊豆(いず)、駿河(するが)、志摩(しま)、相模(さがみ)、安房(あわ)、紀伊(きい)、阿波(あわ)、土佐(とさ)、豊後(ぶんご)、日向(ひゅうが)などの地域が献納地として定められていました。
現代のカツオ節はこうして生まれた
現在の製法に近いものが確立したのは江戸時代です。和歌山県の紀州印南浦(きしゅういなみうら)で燻製による乾燥方法(燻乾法・くんかんほう)が考案され、これが1674年に土佐の宇佐浦(うさうら)に伝えられました。
カビ付けという独特の製法
高級なカツオ節には、表面に白いカビを生やす「カビ付け」という工程があります。このカビはカツオブシカビ(コウジカビの一種、学名:アスペルギルス・グラウクス)と呼ばれ、以下のような重要な働きをします:
- 水分や脂肪の除去
- 特有の香りと味わいの付与
- だし汁を透明に
- 悪いカビの繁殖を防ぐ
驚くべきことに、このカビ付けは最初から計画されていたものではありませんでした。土佐では、大坂や江戸への長距離輸送中に自然とカビが生えることに悩まされていましたが、このカビが逆に保存性を高め、味も良くすることが分かりました。
全国に広がった製法と地域の特徴
土佐節(高知)
- 本枯節(ほんがれぶし)と呼ばれる最高級品
- カビ付けを4回以上実施
- コクと深い旨味が特徴
薩摩節(鹿児島)
- 荒節(あらぶし)が中心
- カビ付けをしないものも
- すっきりとした味わい
伊豆節(静岡)
- 生利節(なまりぶし)から本枯節まで多様
- 程よい塩加減
- バランスの取れた味
カツオ以外の「節」たち
実は「節」は様々な魚で作られています:
- 宗田節(そうだぶし):カツオに似た味わい
- 鯖節(さばぶし):関東の蕎麦つゆに多用
- 鮪節(まぐろぶし):マグロから作る珍しい節
- 鯵節(あじぶし):濃厚な味わい
- 鰯節(いわしぶし):上品な味わい
栄養価と健康効果
カツオ節には驚くほど豊富な栄養が含まれています:
- たんぱく質(100gあたり約75g)
- 必須アミノ酸
- ビタミンB群
- カルシウム
- 鉄分
選び方と使い分けのポイント
用途別の選び方
- だし用
- 本枯節:澄んだ出汁に
- 荒節:こってりした出汁に
- トッピング用
- 薄削り:お好み焼きなどに
- 厚削り:おにぎりなどに
保存方法のコツ
- 高温多湿を避ける
- 虫害に注意
- できるだけ早めに使用
まとめ
カツオ節は、単なる保存食から始まり、日本の食文化に欠かせない調味料として発展してきました。その歴史は縄文時代にまで遡り、時代とともに技術を進化させながら、現代でも進化を続けている伝統食材なのです。