「肝臓は沈黙の臓器」と耳にしたことはありませんか?
私たちの体内で黙々と働き続ける肝臓は、病気がかなり進行しても自覚症状が出にくい特徴があります。そのため気づいたときには重症化していることも珍しくありません。
この記事では、肝臓の重要な働き、沈黙の臓器と呼ばれる理由、脂肪肝などの代表的な疾患との関係、そして肝臓を守るためにできることまで詳しく解説します。
結論:高い予備能力と痛覚神経の少なさが「沈黙の臓器」と呼ばれる理由
肝臓は多機能で再生力も高く、3割程度の機能が残っていれば日常生活を維持できます。そのため多少の異常では自覚症状が現れにくいのです。
しかし放置すると深刻な病気へ進行するリスクがあり、日常的な管理と早期検査が欠かせません。
肝臓が担う多彩な役割
肝臓は成人で約1.0〜1.5kgと体内最大級の臓器。代謝から解毒、消化補助まで幅広い働きを担います。
① 代謝と栄養の管理
- 糖質・脂質・たんぱく質の代謝と貯蔵
- 血糖値を安定させる(グリコーゲン蓄積)
② 解毒・分解機能
- アルコールや薬物、有害物質の分解・無害化
- 尿素回路でアンモニアを尿素に変換
③ 胆汁の生成と分泌
- 脂質の消化・吸収を助ける胆汁を生成
④ 血液凝固因子の生成
- 出血を防ぐためのタンパク質を合成
さらに肝臓は高い再生能力を持ち、一定の損傷であれば自然修復が可能です。
なぜ「沈黙の臓器」と呼ばれるのか?
沈黙の臓器と呼ばれる理由は以下の通りです。
痛覚神経がほとんど存在しない
肝臓は痛みを感じる神経が乏しく、多少の炎症や損傷では痛みが生じません。
高い予備能力
全体の3割程度の機能が維持されていれば、日常生活に支障なく働き続けます。
自覚症状が出るのは病気がかなり進行した後
黄疸や腹水などの症状が出るころには、すでに病状が深刻化している場合が多くなります。
脂肪肝をはじめとする肝疾患との関係
沈黙の臓器ゆえに見逃されやすい代表例が「脂肪肝」です。
脂肪肝は食生活の乱れや運動不足、アルコールなどが原因で肝臓に中性脂肪が蓄積する状態です。
詳しくは
脂肪肝はどうしてなる?進行すると肝硬変になるの?治し方もわかりやすく解説
でも解説していますが、放置すると肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあります。
また、以下のようなケースも要注意です。
- 痩せているのに脂肪肝?その原因とは?体型だけでは判断できない理由を解説
→ 痩せ型でも内臓脂肪型脂肪肝になることがあります。 - 中性脂肪は正常なのに脂肪肝?その理由と見逃しがちな原因をわかりやすく解説
→ 血液検査が正常値でも脂肪肝が進行しているケースもあります。 - 脂肪肝にバナナやヨーグルトは効果ある?選び方と注意点を解説
→ 食事療法としての注意点も重要です。
脂肪肝は特に40代以降で増加傾向があり、男女問わず注意が必要です。
肝臓病が進行したときに現れる主な症状
- 倦怠感・疲労感
- 食欲不振・体重減少
- 黄疸(皮膚や白目の黄変)
- 皮膚のかゆみ・乾燥
- 腹水・腹部膨満感
- 出血傾向(内出血や紫斑ができやすい)
こうした症状が出る前の予防と早期発見がとても重要です。
肝臓病の予防法と日々の心がけ
飲酒を控える
アルコールは脂肪肝・肝炎の大きな要因。節酒・禁酒が効果的です。
食生活の改善
高脂肪・高糖質を控え、野菜・たんぱく質・良質な脂質をバランスよく摂取しましょう。
適度な運動
ウォーキングなどの有酸素運動は内臓脂肪の改善に役立ちます。
ウイルス性肝炎の検査・ワクチン接種
B型・C型肝炎ウイルスの検査を受け、必要に応じてワクチン接種を行いましょう。
定期的な健康診断
AST・ALT・γ-GTPなどの肝機能検査は年1回以上受けておくと安心です。
まとめ
肝臓は沈黙の臓器として静かに体を支えてくれています。しかし沈黙の裏では着実にダメージが蓄積している可能性も。
脂肪肝をはじめとした肝疾患は生活習慣の見直しで予防・改善が可能です。早期に気づいてケアすることが、将来の重症化を防ぐ最大のポイントです。
静かに頑張る肝臓に日々感謝し、今日からできる小さな健康習慣を積み重ねていきましょう。