消防署で20年以上火災現場に向き合ってきたベテラン消防士の田中さんに、冬の火災増加の原因と対策について詳しく聞きました。最新の消防庁統計によると、1月から3月にかけて火災が多発する傾向にあるそうです。
冬に火災が増える2つの主な理由
1. 暖房器具の使用増加
「冬の火災増加の最大の要因は、暖房器具の使用が急増することです」と田中さん。電気ストーブ、石油ヒーター、こたつ、ハロゲンヒーター、セラミックヒーターなどの暖房器具は、使い方を誤ると重大な火災につながるとのこと。
2. 空気の乾燥
「冬は湿度が極端に低下します。乾燥した空気は火の回りが非常に早く、小さな火種でも大きな火災に発展しやすい環境になってしまうんです」と田中さんは警告します。
主な火災原因と具体的な予防策
電気関連の火災を防ぐ
「最近増えているのが、トラッキング現象による火災です」と田中さん。トラッキング現象とは、コンセントとプラグの間にたまったホコリが湿気を帯びて発火する現象のこと。また、コードの断線・損傷も主な原因だそうです。
予防のポイントとして、以下を挙げてくれました:
- コンセントやプラグの定期的な清掃
- コードの点検と適切な交換
- たこ足配線は避ける
暖房器具による火災を防ぐ
田中さんによると、就寝中や外出時の電源の切り忘れ、洗濯物の接触、石油ヒーターの給油ミスなどが主な原因とのこと。
安全な使用方法として、以下を徹底するよう助言してくれました:
- 就寝・外出時は必ず電源オフ
- 周囲に燃えやすいものを置かない
- 給油は完全に消火してから
調理中の火災を防ぐ
「現場で多いのが、天ぷら油の過熱やコンロの消し忘れによる火災です」と田中さん。
特に注意すべきポイントとして:
- 調理中はその場を離れない
- 油を使う調理は特に注意
- タイマーの活用
命を守る住宅用火災警報器
設置は法律で義務付け
「消防法では、寝室がある階の階段(屋内に階段がない場合は避難口)、寝室への設置が義務付けられています。台所はできるだけ設置するようにしましょう」と田中さん。
維持管理のポイント
田中さんおすすめの点検方法:
- 定期的な作動確認(月1回程度)
- 10年を目安に交換
- 異常があった場合は速やかに交換
火災発生時の対応
初期消火の限界を知る
「最も大切なのは、『逃げ遅れない』ことです」と田中さんは強調します。炎が大きく燃え広がっている場合や、煙が充満している場合は、迷わず避難を優先してください。
避難のポイント
田中さんが特に強調する3つのポイント:
- 煙を少しでも感じたら即避難
- 姿勢を低くして避難
- 一度避難したら絶対に戻らない
まとめ
「冬季の火災は、主に暖房器具の使用と空気の乾燥が原因です。火災警報器の設置・点検、日頃からの防火対策、そして何より『逃げ遅れない』という意識が重要です」と田中さん。小さな注意と習慣が、大切な命を守ります。