2024年に漫画家・鳥山明さんの訃報で耳にした方も多い「急性硬膜下血腫」。普段あまり聞き慣れない医学用語ですが、誰にでも起こりうる重大な脳の病気です。
この記事では、急性硬膜下血腫とはどんな病気なのか、原因・症状・致死率・予防策までわかりやすく解説します。
結論:急性硬膜下血腫は頭部外傷で生じる命に関わる出血
急性硬膜下血腫とは、脳を覆う硬膜と脳の間(硬膜下腔)に血液が急速にたまる状態です。主に転倒や交通事故などによる頭部外傷が原因となり、短時間で脳に強い圧迫を及ぼします。発見・治療が遅れると致命的になる危険性が高いため、迅速な医療介入が必要です。
急性硬膜下血腫とは?基本的な仕組み
人間の脳は、脳を守る3層の膜(硬膜・くも膜・軟膜)に包まれています。そのうち硬膜と脳の間にできた隙間(硬膜下腔)に出血が起こるのが硬膜下血腫です。
急性型は出血が短時間(数時間〜数日以内)で進行し、脳の圧迫が急速に高まるため非常に危険です。
主な原因は「頭部への強い衝撃」
急性硬膜下血腫の原因の多くは、外傷による脳血管の損傷です。
- 交通事故(車・バイク・自転車の転倒事故)
- 転倒(高齢者の家庭内転倒など)
- スポーツ中の衝突・転倒
- 暴行による外傷
特に高齢者では、脳萎縮により脳と硬膜の隙間が広がっているため、軽度の打撲でも血管が切れやすくなっています。また、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方は出血リスクが高まります。
急性硬膜下血腫の主な症状
出血量・出血速度によって症状は急激に悪化することがあります。
- 強い頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 意識がぼんやりする(意識障害)
- 手足のしびれや運動麻痺
- ろれつが回らない・言葉が出にくい
- けいれん発作
- 重症例では意識消失・昏睡
典型的には、頭部を打った後しばらくしてから症状が悪化することもあるため注意が必要です。
急性硬膜下血腫の致死率
急性硬膜下血腫は、治療の遅れが致命的リスクに直結します。致死率は以下の通り報告されています。
- 全体の致死率:30〜70%
- 高齢者・広範な出血・手術不能例では80%超となる場合も
- 早期手術が成功すれば、軽症例は良好な回復が可能
出血量・脳損傷の有無・治療開始までの時間が生存率に大きく影響します。
早期発見・早期治療が生死を分ける
急性硬膜下血腫が疑われたら、即座に脳神経外科のある医療機関へ搬送することが重要です。診断は主に以下で行われます。
- CTスキャン(最も迅速・高感度)
- MRI(出血範囲や慢性化の確認)
必要に応じて、開頭血腫除去術やドレナージ手術を早急に行い、脳圧を下げる治療が実施されます。治療のタイミングが生存率を大きく左右します。
急性硬膜下血腫の予防策
予防の基本は「頭を守る生活習慣」です。
- 自転車・バイク・スキー・スノボでは必ずヘルメット着用
- 高齢者は家庭内の転倒防止対策(段差の解消・手すり設置など)
- 飲酒時の転倒に注意
- スポーツ中の安全確認と頭部衝撃の管理
- 血液サラサラの薬を服用中の人は転倒予防を特に徹底
日常のわずかな注意が、大きな事故予防に繋がります。
まとめ
- 急性硬膜下血腫は、脳の硬膜下腔に急速に血液がたまる重篤な出血性疾患
- 主な原因は頭部外傷(転倒・事故・スポーツ)
- 頭痛・嘔吐・意識障害などが初期症状として現れる
- 治療の遅れは高い致死率に直結する
- 予防には転倒防止・ヘルメット着用・安全確認が重要
頭を守る意識を日常的に持つことが、命を守る第一歩になります。