水中で口をパクパクしている魚。
「水を飲んでるのかな?」と思ったことはありませんか?
人間が同じことをしたら溺れてしまいそうなのに、なぜ魚は平気なのか――
この記事では、魚の呼吸のしくみ、水分の取り入れ方、そして“なぜ溺れないのか”を、科学的にわかりやすく解説します。
魚が口を開けているのは「呼吸」のため
魚が口を開閉しているのは、水中で酸素を取り込むためです。
- 水を口から取り入れる
- 水がエラを通過する
- エラで酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する
つまり魚にとっては、「水を通すこと=呼吸すること」なのです。
エラは“水中の酸素を取り出す装置”
魚のエラは、まるで「逆の肺」のようなしくみを持っています。
- エラには薄く広がった「エラびらびら」が多数存在
- その表面に毛細血管がびっしり張り巡らされている
- 水中の酸素が血液に拡散され、二酸化炭素は外へ排出される
このしくみにより、魚は効率的に水中の酸素を取り込めるのです。
魚は水を飲んでいるの?
実は魚の種類によって、水の“飲み方”が大きく異なります。
淡水魚(川や湖に住む魚)
- 体液の塩分濃度 > 周囲の水
- 水分が体内に自然に入ってくるため、水を飲む必要はなし
- 腎臓で薄い尿を大量に出して水分を調整
- エラから塩分を補給
海水魚(海に住む魚)
- 体液の塩分濃度 < 海水
- 水分が体外に出ていってしまうため、海水を飲んで水を補給
- エラと腎臓で余分な塩分を排出
- 尿は少量・高濃度で排出
つまり、海水魚は“水を飲む”、淡水魚は“飲まない”というのが基本です。
魚の「水を飲む」は人間とちょっと違う
海水魚は確かに海水を飲んでいますが、人間のように「ごくごく飲んでお腹に溜める」わけではありません。
- 口から水を取り入れてエラへ流す
- 呼吸のために通過させつつ、一部を吸収
- 腸やエラで必要な水分だけを取り込み、余分は排出
このように、魚は呼吸と水分補給を同時にこなす特別な体のしくみを持っているのです。
なぜ人間は水中で溺れてしまうのか?
人間は「肺」で呼吸する生き物。
水中ではこの肺が機能しなくなります。
- 息ができずに苦しくなり、反射的に口を開けてしまう
- 水が気道に入り(誤嚥)、呼吸困難に
- 大量に水を飲み込めば、体液のバランスが崩れ「水中毒」や嘔吐のリスクも
特に海水は塩分濃度が高く、体内の水分が逆に奪われてしまいます。
🧂 海水の塩分濃度:約3.5%
💧 人間の体液の塩分濃度:約0.9%
海水を飲むと、体は「これじゃ足りない」と水分を引き出され、結果的に脱水症状に近い状態に陥ってしまうのです。
特別な呼吸法をもつ“例外の魚”もいる
一部の魚は、水中だけでなく空気中の酸素も使える特別な器官を持っています。
- ライギョ(雷魚):エラと空気呼吸器官の両方を持ち、酸欠でも生きられる
- 肺魚:乾季で水が干上がっても、肺で呼吸して生存可能
- ベタ(熱帯魚):ラビリンス器官で空気を補助的に取り入れる
ただし、これらも「水中生活が基本」であり、陸上で長く生きられるわけではありません。
ちなみに、フグなどの魚も特殊な防御メカニズムや体の構造を持っており、
「スーパーのフグは毒がないの?安全な理由と流通の仕組みを徹底解説」では魚の特殊性が詳しく語られています。
まとめ:魚は「水を飲まずに呼吸している」わけじゃない!
- 魚は口から水を取り入れてエラで呼吸している
- 淡水魚は水を飲まず、海水魚は必要に応じて飲んでいる
- エラ・腎臓・皮膚を使って水と塩分を調整
- 人間は水中では呼吸できず、水が気道に入ることで溺れる
- 魚は水中で暮らすために、極めて高度なしくみを進化させてきた
「水の中で平然と暮らしている魚たち」は、実はとても繊細で合理的な仕組みに支えられているんですね。