骨髄異形成症候群(MDS)とは?症状・原因・治療法・生存率をやさしく解説【血液のがん】

骨髄異形成症候群

「骨髄異形成症候群って何?白血病とは違うの?」「“前がん状態”って聞いたけど、がんなの?」

医師からこうした病名を告げられると、言葉の意味も分からないまま不安になってしまいますよね。私自身も、家族が検査でMDSの疑いを指摘されたとき、「白血病にすぐなるの?治療法はあるの?」と慌てて調べ回った経験があります。

この記事では、骨髄異形成症候群(MDS)の定義・症状・原因・治療法・生存率を、最新の医学的分類に基づいてわかりやすく解説します。また、多発性骨髄腫や白血病など他の血液がんとの違いも丁寧に比較し、信頼できる公的機関の情報とともにまとめました。

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結論|骨髄異形成症候群は「血液のがん」のひとつです

骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄の中で血液細胞をつくる造血幹細胞に異常が生じる病気です。

WHO(世界保健機関)の2022年の分類では、MDSは明確に「骨髄系腫瘍(Myeloid Neoplasms)」として、がん(造血器腫瘍)の一種に含まれます。つまり、医学的には「前がん状態」ではなく「がんの一種」として扱われています。

ただし、進行のスピードがゆっくりなことが多く、一部の人では急性骨髄性白血病(AML)に進行する可能性があるため、「前がん的」と説明されるケースもあります。

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骨髄異形成症候群の症状|こんなサインに要注意

骨髄異形成症候群は、骨髄での血液の“製造工場”に異常が起きるため、赤血球・白血球・血小板のすべてに影響が出ることがあります。

  1. 貧血によるだるさ・息切れ・顔色の悪さ
  2. 出血しやすくなる(鼻血、歯ぐきの出血、皮下出血)
  3. 感染症が長引く・繰り返す(肺炎、発熱など)

高齢者では「年のせい」と見過ごされやすく、健康診断の血液検査で異常が見つかることで気づくことも多いです。

原因とリスク因子|なぜMDSになるのか

MDSの正確な原因はまだ不明ですが、以下のようなリスク因子が知られています。

  • 加齢(60歳以上で多く発症)
  • 抗がん剤・放射線治療の後遺症(治療関連MDS)
  • ベンゼンなど有害化学物質への暴露
  • 特定の遺伝子変異や染色体異常

特に抗がん剤治療後に発症するMDSは「治療関連骨髄異形成症候群(t-MDS)」と呼ばれ、進行が速い傾向があります。

診断と検査|血液だけではわからない

  1. 血液検査(CBC)
    • 赤血球、白血球、血小板の異常をチェック
  2. 骨髄穿刺検査
    • 骨髄液を採取し、形態異常・芽球比率を観察
  3. 染色体検査・遺伝子解析
    • 染色体異常の有無や、ASXL1、TP53などの遺伝子変異を調べる
  4. IPSS-R(改訂国際予後スコア)分類
    • 病気の進行リスクと生存率を評価

これらの検査を総合的に見て、どの程度危険な病型か(リスク分類)を判定し、治療方針を立てます。

治療法|進行度・体力・遺伝子変異で異なる選択肢

MDSの治療法は「進行の早さ」「患者の年齢・体力」「遺伝子変異の有無」などにより選択されます。

1. 支持療法

  • 貧血に対する輸血や赤血球造血刺激因子(ESA)による治療
  • 感染症予防、出血対策など

2. 低リスクMDSに対する治療

3. 高リスクMDSに対する治療

  • DNAメチル化阻害薬(アザシチジン)
  • 分子標的薬(研究中):イメテルスタット、ベネトクラクス併用療法など

4. 造血幹細胞移植(唯一の根治的治療)

  • 若年〜中年層でドナーが見つかれば第一選択
  • 高齢者では合併症や移植関連死亡のリスクあり

生存率と予後|リスク分類で大きく異なる

MDSの予後はIPSS-Rで分類され、それに応じて生存率が異なります。

リスク分類平均生存期間白血病への進行率
低リスク約5年以上低い(5〜10%未満)
中間リスク約2〜5年中程度(20〜30%)
高リスク約1年以下高い(50%以上)

つまり、「3割が白血病に進行する」ではなく、リスク分類によって進行率は大きく異なるということを理解しておくことが大切です。

他の血液がんとの違い

すべて「骨髄由来の腫瘍」ですが、がん化する細胞や症状に違いがあります。

これらの全体像は、次の記事で図解とともに解説しています:

👉 血液のがんとは?白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫の違いと種類をわかりやすく解説

まとめ|焦らず、まずは正しい理解から

骨髄異形成症候群(MDS)は、「血液のがん」のひとつとして分類される疾患です。
しかし、すぐに命に関わる病気ではなく、経過観察や支持療法で長く生活を続けられる人も少なくありません。

  • 定期的な血液検査と、適切な治療選択
  • 信頼できる専門医のもとでの経過管理
  • 不安なときは、医療機関や患者会などに相談すること

正しい知識が、将来の選択を助けてくれるはずです。

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