アドラー心理学とは?「性格は変えられない」をひっくり返す、人生を楽にする3つの視点

アドラー心理学

「変わりたいのに、変われない」
「人間関係のストレスで、毎日がしんどい」

もしあなたがそう感じているなら、それはあなたの能力が足りないからではありません。
もしかすると、「人生を見るメガネ」が、少し曇っているだけかもしれません。

この記事では、世界的なベストセラー『嫌われる勇気』のベースにもなった「アドラー心理学(個人心理学)」の考え方を、専門用語を使わずに紹介します。

これは、誰かを責めるための理論ではありません。
「過去に何があったとしても、今ここから人生は選び直せる」
そう気づかせてくれる、希望の心理学です。

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アドラー心理学は「原因」ではなく「目的」を見る

心理学には様々な流派がありますが、多くの理論が「なぜ、そうなってしまったのか?」と過去の原因を探るのに対し、アドラー心理学は「これから、どうしたいのか?」という未来の目的に注目するのが特徴です。

「性格が暗いから(原因)、人と話せない(結果)」と考えるのではなく、
「傷つかないために(目的)、あえて人と話さない選択をしている(手段)」と考えます。

少し厳しい見方に思えるかもしれません。しかし、これは裏を返せば「目的さえ変えれば、行動は今すぐ変えられる」という、強力なエールなのです。

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1. トラウマの「呪い」を解く(目的論)

アドラー心理学の中で最も議論を呼び、かつ多くの人を救ってきたのが「トラウマ」に対する考え方です。

過去は「決定事項」ではない

もちろん、現代医学においてPTSD(心的外傷後ストレス障害)などのケアが必要な状態は明確に定義されており、専門的な治療が必要です。
しかしアドラーは、日常生活における悩みについて「過去の出来事が、自動的にあなたの未来を決めるわけではない」と説きました。

私たちはつい、「親が厳しかったから、自信が持てない」と考えがちです。
しかしアドラー的な視点(目的論)では、こう問いかけます。
「自信がないから動けない」のではなく、「失敗して傷つくのが怖いから、自分を守るために『自信がない自分』を演じているのではないか?」

過去の辛い経験は、消すことはできません。
でも、その経験を「動かない理由」にするか、「人の痛みがわかる糧」にするかは、今のあなたが決めることができます。

自分を守るための「こじらせ」

私たちが他人の目を気にしすぎてしまうのは、実は「自分を守りたい」という防衛本能の一種かもしれません。
この「自意識」の正体を知るだけでも、心は少し軽くなります。詳しくはこちらの記事でも解説しています。
中二病は世界共通?文化で異なる”こじらせ”の表れ方を徹底解説

2. 悩みの多くは「対人関係」にある

アドラー派の心理学では、「人間の悩みのほとんどは、対人関係の文脈で生まれる」と考えます。
孤独を感じるのも、劣等感を持つのも、すべて「他者」との比較や関係性の中にいるからです。

この悩みを解くカギが、「課題の分離」という考え方です。

「それは誰の課題か?」と線を引く

人間関係のトラブルの多くは、「自分の課題に土足で踏み込まれる」か、「他人の課題に勝手に踏み込む」ことで起きます。

これを見分ける方法はシンプルです。
「その選択の結果、最終的に引き受けるのは誰か?」を考えてみてください。

【ケーススタディ:SNSでの批判】

  • あなたが何を発信するか → あなたの課題(コントロール可能)
  • それを見た他人がどう思い、何を言うか → 他人の課題(コントロール不可)

「批判されたくないから発信をやめる」というのは、他人の課題を背負い込んでいる状態です。
「私は発信する。どう思うかは相手の自由」と割り切ることで、心の平穏が戻ってきます。

スマホの通知に振り回されない環境を作ることも、現代版の「課題の分離」と言えるでしょう。
【画像つき】1分でできる!Amazonアプリの通知をオフにする方法(セール・おすすめ通知を止めたい方へ)

注:「見捨てる」わけではありません

課題の分離は、相手に関心を持たない(冷淡になる)ことではありません。
相手の領域を尊重し、支配しないこと。その上で「困ったときはいつでも助けるよ」と見守ることが、本当の信頼です。

3. 「褒める・叱る」より「勇気づけ」を

アドラー心理学では、褒めることも叱ることも、「縦の関係(上下関係)」に基づいた評価になりやすいと考え、慎重な姿勢をとります。

  • 褒める:「(下の者が)よくやった」という評価
  • 叱る:「(下の者が)ダメだ」という強制

目指すべきは、対等な「横の関係」です。
評価する代わりに、感謝を伝え、相手の存在を尊重すること。これを「勇気づけ(Encouragement)」と呼びます。

「えらいね」より「ありがとう」

誰かが何かをしてくれた時、「えらいね」と上から評価するのではなく、
「ありがとう、助かったよ」と、横から感謝を伝えてみてください。

人は「自分は誰かの役に立っている」と感じた時(貢献感)、自らを奮い立たせるエネルギーが湧いてきます。

今日から始める「幸せになる勇気」

自分を変えるのに、特別な才能は要りません。必要なのは、これまでの慣れ親しんだ考え方(ライフスタイル)を変える、少しの「勇気」だけです。

焦らず、今を味わう

性格や考え方は、長年かけて作られた「癖」のようなもの。一朝一夕には治りません。
結果を急いで自分を責めるのではなく、変化していくプロセスそのものを楽しんでみてください。人生を倍速で駆け抜ける必要はないのです。
倍速視聴は本当に作品を楽しめるの?フリーレン騒動に学ぶ「味わう視聴」の大切さ

FAQ よくある疑問

Q. 「課題の分離」をすると、冷たい人だと思われませんか?

A. 最初はそう感じる人もいるかもしれません。しかし、相手の顔色をうかがって迎合するよりも、自分の軸を持って生きている人の方が、長期的には信頼されます。「冷たい」と言ってくる人は、あなたをコントロールしたかっただけかもしれません。

Q. 認知行動療法(CBT)と似ていませんか?

A. はい、共通点は多いです。アドラー心理学は、アルバート・エリスの論理療法など、現代の認知系アプローチの源流の一つとして影響を与えたと言われています。「認知(捉え方)を変えることで感情や行動を変える」という点は共通しています。

まとめ

アドラー心理学は、魔法ではありません。
しかし、「過去の原因」に縛られるのをやめ、「未来の目的」に向かって「自分の課題」に取り組むという視点は、あなたの背中の荷物を確実に軽くしてくれます。

「自分は、これからどうしたい?」
そう自分に問いかけることから、新しい人生は始まります。

参考情報

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